
豊橋市の精神科の可知記念病院です。
今回のblogは医局の担当です。
世界で高齢化が進み、今日では約5000万人が認知症と戦っています。認知症は現代でありふれた病にもかかわらず、根本的な病態解明がなかなか進んでいません。
認知症の中で最も頻度が高いアルツハイマー病についても様々な仮説が提唱されており、「Aβ仮説」や「タウ仮説」などが有名です。これらの仮説に触れながら、アルツハイマー病の発症に関与している異常たんぱく質であるアミロイドベータとタウタンパク質について簡単にまとめてみました。
アミロイドベータとは
アミロイドベータ(Aβ)は、アルツハイマー病患者の脳に見られるアミロイド斑の主成分として、アルツハイマー病発症に大きく関与している物質です。Aβはアミロイド前駆体タンパク質(APP)が切断されることで産生されます。
Aβは、タウタンパク質の異常なリン酸化を誘導し、神経細胞に対する毒性を増大させると考えられています。アルツハイマー病の根本原因をAβとする説をAβ仮説といい、長らく主流となっていた考え方です。
最近話題になっている医薬品のレカネマブ(レケンビ®)はアミロイド仮説に基づいて、Aβの中程度の大きさの凝集体の中でも、特に神経毒性が高いとされるプロトフィブリルや、より大きな凝集体であるアミロイド斑に結合して脳内から取り除きます。しかし、レカネマブはアルツハイマー病に対して一定の効果を認めるものの、がん分子標的薬のような切れ味の鋭い薬にはほど遠く、Aβ仮説の限界もささやかれています。
タウタンパク質とは
タウタンパク質は、細胞内の微小管を安定化するタンパク質であり、中枢神経系の神経細胞やグリア細胞に発現しています。タウタンパク質は、微小管の重合や安定化を調節するだけでなく、脳の成熟、軸索送、熱ストレスに対する細胞応答など、多様な現象に関わっています。
アルツハイマー病の患者の脳には、異常にリン酸化されたタウタンパク質の沈着物(神経原線維変化)が見られることが知られています。神経原線維変化を主な病理像とするものの総称を「タウオパチー」といい、アルツハイマー病以外にも多くの疾患が知られています。
Aβ仮説に基づいた創薬が期待ほどの成果が上がっていないことを受けて、タウタンパク質がアルツハイマー病の原因であるという「タウ仮説」が注目されています。新たなアルツハイマー病治療法としてタウタンパクのリン酸化や凝集を抑制する治療法の開発が期待されています。
アミロイドベータとタウタンパク質の違いと関係性
アミロイドベータ(Aβ)とタウタンパク質の大きな違いは、アミロイドベータが神経細胞の「外側」に蓄積するのに対し、タウタンパク質は神経細胞の「内側」で異常を引き起こすという点です。
さらに重要なのは、この2つが単独で働くのではなく、アミロイドベータの蓄積がタウタンパク質の異常を誘導し、連鎖的に脳にダメージを与えるという関係にあることです。実際、認知症の症状出現より20年以上前からアミロイドベータが蓄積し始め、その約10年後にタウタンパク質の蓄積が加速することが分かっています。
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