豊橋市の精神科の可知記念病院です。
今回のblogは医局の担当です。

最近の抗認知症薬の開発動向

今回は最近注目されている新規の抗認知症薬の開発動向について簡単に紹介したいと思います。

・レカネマブ

アルツハイマー病治療薬レカネマブは、2023年1月にアメリカで新薬として認可され、日本でも近く認可される見込みです。この薬は、アルツハイマー病の原因としてもっとも有力視されているアミロイドという脳内の蛋白質を除去する働きがあります。治験では、このレカネマブを18か月投与した時点でプラセボ(偽薬)に比べて、病気の進行を27%抑制しています。この効果は、既存薬とは根本的に異なる薬であることを示していますが、それほど高い効果ではありません。また、この薬は非常に早期の患者にしか効果がなく、アルツハイマー病と診断するためには特別な検査が必要です。副作用や高額な薬価も問題となります。さらに、アルツハイマー病の進行にはアミロイド以外の要因も関与している可能性があり、病気を治癒させるためにはそれらに対する治療薬も必要です。

・アデュカヌマブ

アデュカヌマブはアルツハイマー病の新薬候補で、アメリカでは2021年6月に条件付き承認されました。しかし、臨床試験の計画が途中で変更されたことや、治療効果が非常に小さいことなどに対する懸念があります。条件付き承認とは、有効な治療法が存在しない重篤な疾患に対する新薬の候補については、治療効果を予測できる指標を満たすことができれば、臨床的な有効性を示すデータが整う前に承認する仕組みです。アデュカヌマブの正式承認には、新たな臨床試験で治療効果を証明する必要がありますが、その結果が出るまでには数年かかると見られています。諮問委員会のメンバー数人は、決定に抗議する形で辞任を表明しました。日本では、アデュカヌマブの承認は見送られています。

・ドナネマブ

2023年5月、開発中のアルツハイマー病治療薬ドナネマブについて、臨床試験(治験)で認知機能の低下を1年半で35%遅らせる効果があったと発表がありました。2023年6月末までに米食品医薬品局(FDA)に承認に向けた申請をする予定です。ドナネマブは、薬を少なくとも12カ月使った患者の治験データが不十分だったとして2023年1月に条件付き承認が見送られた経緯があります。ドナネマブは脳の腫れや出血などの副作用もあることが治験で判明しており、安全性についても検証が必要だとされています。

 

・ガンテネルマブ

2022年12月、認知機能の低下を抑制できなかったことを受けて、開発中のアルツハイマー病治療薬ガンテネルマブの治験のほとんどを終了したとの発表がありました。ガンテネルマブは軽度認知障害と初期のアルツハイマー病を対象とした試験で有意な効果を示しませんでした。