豊橋市の精神科の可知記念病院です。
本日のブログは医局が担当いたします。

Long COVIDの機序

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の制御は世界的に難しい状況にあります。現在は軽症例の割合が高いと言われるものの絶対的な感染者数が多いため、重症者数や死亡者数もそれなりに増えてしまっています。さらに問題となっているのがlong COVIDと呼ばれている病態。経過する期間に統一された定義はないものの、NICEやCDCは

COVID-19の急性期後4週間以上経過してから出現する/遷延する症状

としています。最近の研究では、SARS-CoV-2の感染によって嗅覚神経組織で炎症が持続し、嗅球を介して中枢神経にその影響が及ぶようです1)。そして、その影響とは、大脳白質においてミクログリアの活性化や炎症性サイトカインの産生が起こり、海馬の神経新生が障害されることという報告もあります2)
このように、long COVIDとしての精神神経症状は、その一因として神経炎症の可能性がいくつかの報告で明らかになってきています。統合失調症やうつ病など種々の精神障害も神経炎症がその背景にあることが示唆されてきていますが、long COVIDはその炎症の果たす役割が非常に大きいことが推察されます。

【参考文献】
1)Justin J Frere, et al: SARS-CoV-2 infection in hamsters and humans results in lasting and unique systemic perturbations post    recovery. Sci Transl Med, 2022 Jun 7;eabq3059. Online ahead of print.
2)Anthony Fernández-Castañeda, et al: Mild respiratory COVID can cause multi-lineage neural cell and myelin dysregulation.         Cell. 185(14):2452–2468.e16, 2022.