豊橋市の精神科の可知記念病院です。
本日のブログは医局が担当いたします。

Long COVIDの治療

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した後に認められるlong COVIDは、前回お伝えしたように、CDCやNICEでは

COVID-19の急性期後4週間以上経過してから出現する/遷延する症状

という定義がなされています。このlong COVIDに対してはコリンエステラーゼ阻害薬のドネペジルが動物モデルで有効であったというプレプリントの論文があります1)。今後臨床試験がなされるかもしれませんが、あくまでも現時点ではlong COVIDであろうとなかろうと、精神症状に対する原則的な治療は西洋医学的にも東洋医学的にも同様と考えられます。例えば抑うつ気分や不安感に対する向精神薬治療ではSSRIなどの抗うつ薬を用いますが、これはBrain-Derived Neurotrophic Factor(脳由来神経栄養因子:BDNF)の受容体であるTropomyosin-related kinase B (トロポミオシン関連キナーゼB:TrkB)に結合することでBDNF産生を促し、神経新生を加速させます2)
そのうえで、long COVIDで注目すべき点は前回述べたように神経炎症であろうと考えられます。うつ病に対する向精神薬治療でも、抗うつ薬にセレコキシブやω-3脂肪酸やスタチンやミノサイクリンといった抗炎症作用を持つ薬剤を付加する試みが行なわれています。抗うつ薬そのものも軽度の抗炎症作用を有しているものの、神経炎症が病態により寄与していると想定されるうつ病であれば、抗炎症を強調する治療は理にかなっているかもしれません。しかしながら、long COVIDにおける神経炎症が上記の抗炎症治療で緩和されるレベルのものかどうかは全くもって不明であり、私の個人的な推測の域を出ていません。今後、それが有用になってくれるかどうか、明らかになってくることが期待されます。

【参考文献】

1)Naomi Oka, et al: SARS-CoV-2 causes brain inflammation via impaired neuro-immune interactions. bioRxiv. Posted July 15, 2022.
2)Plinio C Casarotto, et al: Antidepressant drugs act by directly binding to TRKB neurotrophin receptors. Cell. 184(5):1299–1313.e19, 2021.