豊橋市の精神科の可知記念病院です。
今回のblogは医局の担当です。
妄想とは何か?
「妄想」という言葉は日常生活では「いかがわしい考え」や「空想」という意味で用いられることが多いようです。しかし、精神医学用語としての「妄想」は、不合理で事実無根な内容の確信であり、どのような反証を示しても訂正することができないという特徴があります。主に統合失調症に特徴的な症状ですが、うつ病や双極性障害、認知症などでも認めます。皆様の参考となるように、様々な妄想の種類について簡単にまとめてみました。
妄想気分
周囲のすべてが新たな意味を帯び、不気味で何かが起ころうとしているという不安緊迫感を妄想気分といいます。統合失調症の発病初期に見られることが多く、明確な妄想の前段階であるとされています。
妄想知覚
知覚によって、理由のない不自然で異様な意味づけが行われることを妄想知覚といいます。例えば「犬が自分に向って一方の前足を上げたのは天の啓示である」などと体験します。
妄想着想
突然何らかの原因、動機なしに、異常な考えを思いつき確信することを妄想着想といいます。
被害妄想
自分が他者から悪意をもって危害を加えられる、苦しめられると思い込みます。主に統合失調症に特徴的な妄想です。
例「近所の住民に電磁波で嫌がらせをされる」
関係妄想
他者の身振りや言葉を自分に関連付けるもので、いやがらせや当てつけなど被害的にとらえることが多いです。主に統合失調症にみられます。
例「あいつが咳をするのは自分をばかにしているからだ」
注察妄想
他者から注視されている、監視されていると思い込みます。主に統合失調症にみられます。
例「正体不明の誰かが監視カメラで常に自分を見張っている」
追跡妄想
誰かがつけてくると思い込みます。主に統合失調症にみられます。
例「ストーカーの集団に追われている」
被毒妄想
飲食物に毒が盛られていると思い込みます。幻覚の1種である幻味や幻臭と関連することが多いようです。主に統合失調症にみられます。
誇大妄想
自分自身を実際の状態よりも、遥かに偉大、金持ちだ等と思い込みます。双極性障害で主にみられますが、統合失調症でもみられることがあります。
血統妄想
自分は特別な血筋(皇族や歴史上の人物など)であると思い込みます。これも双極性障害や統合失調症でみられます。
被愛妄想
根拠がないのにかかわらず、特定の相手に愛されていると確信します。ストーカー行為に繋がることがあります。双極性障害や統合失調症、自己愛性パーソナリティ障害などにみられます。
嫉妬妄想
根拠がないのに配偶者や恋人が浮気していると確信し、嫉妬感情に支配される妄想です。認知症でみられることが多いです。
罪業妄想
自分の過去の些細な言動に関して、重い罪を犯してしまったと確信し、自分を責めてしまう妄想です。主にうつ病でみられます。
貧困妄想
実際の経済状態よりも、自分が貧しくて困窮していると訴える妄想です。これもうつ病に特徴的です。
カプグラ妄想
家族・恋人・親友などが瓜二つの偽物に入れ替わっていると確信する奇妙な妄想です。統合失調症にみられますが、時に頭部外傷でもみられることがあります。