豊橋市の精神科の可知記念病院です。
本日のブログは医局が担当いたします。
“あいだ”の心構え その2
前回は“あいだ”に視点を向け、それを安定化させてみましょうというお話をしました。“あいだ”の安定化は支持的精神療法の骨格になる部分ですし、精神分析的な“転移/逆転移”もお互いの感情のモニタリングとして利用すれば色んな側面から考えることができて患者さんの理解にもつながりますし(解釈するしないは置いておいて)、家族面接も“あいだ”に介入する良い方法。言いたいのは、“あいだ”への着目を促して現時点での患者さんの“あいだ”をゆっくりで構わないから良くしていこうという考えに凝縮されること。患者さんや周りの人に色んな考え方を持ってもらうことが重要です。
前回述べたように、ゆとりがないとみんな考え方が悪い感じに固まってしまうので、そこが苦しくなる点だと思います。良く用いられる例えではコップに半分入ったお水を見て「半分しか入っていない」と考えるか「半分も残っている」と考えるか。同じ事象でも、見方によって全然印象が違いますよね。だから、押し付けにならない様に、症状や行動の持つプラスの面を伝えていきましょう。患者さんは、“患者以前”の状態では何とかやって来られたわけです。でも状況が変わって“あいだ”が苦しくなり、それまでのやり方が通用しなくなって、“患者”になってしまっています。症状や行動はそんな苦しい”あいだ”で何とか患者さんなりに生きていくための手段なのかもしれません。でも、暗雲垂れ込める”あいだ”では肯定的に見ることはできず、患者さん自身も“あいだ”の人々もマイナス方向に眼が向いてしまっています。自分、家族、他人、今の状況、過去の状況、色んな事を責めてしまいます。治療者は苦しみを理解して、これまでの患者さんのやり方にプラスの意味を込めて、それを認めていきましょう。その上で、今後の方向としてどうして行こうかを考えていくことが大切なのではないかと思っています。リフレーミングはその代表格でしょうか。家族という1つのシステムを考えるなら、そのシステムの不調により患者さんは症状を呈することになります。よって、まずそのシステムを安定に持ち込むこと、それによって患者さんは症状を手放しても良い状態になる、となります。
ただし、焦ってはいけません。“あいだ”を良くしようと思って、自分の思う考えを患者さんにどんどん言うと「この先生私のこと分かってくれない」となるでしょう。まずは“支持的”であること。そして大事なのは、変に素早くて薄っぺらな共感ではなくて、なるほどと思えるところまでは聞いて、その後に「あなたの置かれている状況なら、そうなってしまうのも無理はないかもしれませんね」と示す”認証”を持ち出すこと。診察の場としての“あいだ”をまずは安定させましょう。そうすると、患者さんの状態が良くなって例えば家庭での“あいだ”も安定に向かうかもしれません。私たちは患者さんのレジリエンス(しなやかさ、回復する力)を信じ、“あいだ”の意識を以て接し続けることが扇の要なのでしょう。