豊橋市の精神科の可知記念病院です。
今回のblogは医局の担当です。

新型コロナウイルスに関する情報

皆様の参考となるように、新型コロナウイルスについて最近の情報をまとめてみました。

  • 新型コロナウイルスのパンデミックを終わらせるための提言(抜粋要約)

新型コロナウイルスの免疫回避現象や経時的な免疫力の低下、ワクチン接種を躊躇する人たちの存在のため、ワクチン接種だけではパンデミックを終わらせるには不十分である。ワクチン接種を促すための政策だけでなく、ワクチン接種以外の予防や治療の発展を目指すべきである。新型コロナウイルスは空気感染するため、換気が不十分な屋内での感染リスクが最も高い。この性質を念頭に置いて、換気や空気ろ過などの構造的予防策を推進すべきである。基礎疾患などがあり、リスクが高い人は、他の人々がマスクを着用するといった基本的な予防策だけでは感染リスクを十分下げることができないため、室内の換気がより大切となる。新型コロナウイルスに関する偽情報の拡散を防ぐために、偽情報を監視し、その発行者に責任を取らせることを検討すべきである。

(Nature. Nov 3, 2022)

https://www.nature.com/articles/s41586-022-05398-2

 

  • 新型コロナウイルスの感染回数が増えるにつれて、死亡や入院、後遺症のリスクが高まった

米国退役軍人省のデータベースを用いた研究が報告された。新型コロナウイルスの1回のみの感染44万3588人、2回以上の感染4万947人、および感染していない533万4729人を比較した。ワクチン接種の有無にかかわらず、2回以上の再感染で死亡リスクは2.17倍、入院リスクは3.32倍、後遺症も増加した。これらのリスクは感染回数に応じて増加した。

(Nat Med. Nov 10, 2022)

https://www.nature.com/articles/s41591-022-02051-3

 

  • 新型コロナウイルス感染11ヶ月後の後遺症を有する患者では、認知機能障害と相関して脳体積の減少を認めた

スペインにおいて、新型コロナウイルス感染11ヶ月後の後遺症を有する患者86人と対照36人を比較し、脳機能や脳構造、認知機能の変化を調べた研究が報告された。神経画像検査では後遺症を有する患者で大脳皮質、辺縁系、小脳領域における灰白質体積の減少を認めた。さらに灰白質の体積減少は認知機能の低下と有意な相関を認めた。この結果から新型コロナウイルス感染から11ヶ月経過後も、脳の構造的異常が持続し、認知機能障害と関連することが示唆された。

(BRAIN Oct 26, 2022)

https://academic.oup.com/brain/advance-article-abstract/doi/10.1093/brain/awac384/6775147

 

  • 新型コロナウイルスオミクロン株(BA.4、BA.5)流行期の感染者にパキロビッド®︎を投与することで5割程度の入院予防効果が見られた

米国におけるパキロビッド®︎の有用性を調べるための研究が報告された。2022年4月~8月の間にパキロビッド®︎の対象となる18歳以上の699,848人のうち、28.4%がパキロビッド®︎の処方を受けたところ、一定の入院予防効果を認めた (aHR = 0.49)。ただし18-49歳の若年者で、3回以上のワクチン接種を受けた人および基礎疾患が1つしかない人では統計的有意差を認めなかった。以上から新型コロナウイルス感染症による入院を防ぐために、特に高齢者や複数の基礎疾患を持つ人々など、リスクが高いグループに対する有用性が示唆された。

(MMWR. Nov 22, 2022)

https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7148e2.htm

 

  • 新型コロナワクチンを接種した女性では未接種の女性と比較して、周産期のリスクが有意に低くかった

オーストラリアで出産した32536人において、新型コロナワクチン接種状況による周産期の転帰を比較した。新型コロナワクチンを接種した女性では未接種の女性と比較して、死産および早産、出生児のNICU入室リスク、出生児の先天異常が有意に低くかった。

(Am J Obsteric Gynecol. Nov 3, 2022)

https://www.ajog.org/article/S0002-9378(22)00882-1/fulltext

 

  • 米国ではワクチンの接種率が高い州は低い州よりも、新型コロナウイルス感染症による死亡や全死因超過死亡が少なかった

2021年6月~2022年3月における、米国でワクチン接種が最も多い州と最も少ない州の10州および 経済協力開発機構 (OECD) 加盟国 20 か国における全死因超過死亡を調査した。ワクチンの接種率が高い州は低い州よりも、新型コロナウイルス感染症による死亡や全死因超過死亡が少なかったが、米国全体では全死因超過死亡はOECE国を上回った。

(JAMA. Nov 18, 2022)

https://link.springer.com/article/10.1007/s00432-022-04191-y

 

  • 米国の5〜11歳への新型コロナワクチンの3回目接種において、副反応の99.5%は軽症であり、重篤な副反応である心筋炎や死亡の報告はなかった

2022年5月~2022年7月における、米国の5〜11歳(657302人)に対する新型コロナワクチンの3回目接種において、2回目と比較して副反応の頻度に差はなかった。最も多く報告された副作用は、注射部位の痛み(66.7%)、疲労(28.9%)、頭痛(19.9%)であった。副反応の99.5%は軽症であり、0.5%は深刻とみなされたが、心筋炎や死亡の報告はなかった

(MMWR. Aug 19, 2022)

https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7133a3.htm