今回のblogは医局の担当です。

紛らわしい診療科

以前、精神科と心療内科の違いについて書きましたが、それ以外にも精神科と紛らわしい診療科名が医療の現場にはいくつかあり、混乱する方も多いと思います。精神科や心療内科以外の診療科の特徴について、この機会に説明したいと思います。

[神経科]
現在では精神科とほぼ同じ意味で使われます。うつ病などの気分障害、統合失調症、認知症、不安症などが対象疾患です。神経内科と非常に紛らわしいため、2008年からは新規では広告として標榜できなくなりましたが、以前から使用しているところでは経過措置として標榜できます。

[神経内科]脳や脊髄、神経、筋肉の病気を診る内科です。脳卒中、認知症、てんかん、神経や筋肉の異常で体が動きにくくなる病気、などが対象疾患です。精神症状を伴う場合は精神科でも扱います。外傷や腫瘍など手術を要する疾患については、脳神経外科や整形外科で対応することが多いです。

[脳神経内科]
神経内科と神経科が混同され、本来の対象患者が受診に至らないことが多いという経緯から、2018年より神経内科から脳神経内科という標榜に順次切り替わっています。脳と神経の内科という意味ですが、個人的には末梢(脳・脊髄以外)の神経疾患をイメージしにくい名称のように思います。

[脳神経外科]
脳、脊髄、末梢神経、脊椎、脳血管系など病気に対して外科的治療を行う科です。脳動脈瘤や脳出血、頭部外傷、脳腫瘍などが対象疾患です。脳神経内科と対になっている診療科です。

以上が広告として標榜できる精神科と紛らわしい診療科名ですが、病院内の掲示などでは自由に診療科を名乗ることができます。ざっと調べた範囲では、心身医療科、心身医学科、心療科、精神心療科、こころ科、こころのケア科、親と子どもの心療科、子どものこころの心療科などが見つかりました。

精神科という言葉のマイナスイメージを和らげる狙いがあると思いますが、これだけ乱立するとかえって分かりにくくなっており、特に転院する際にはどこの科を選べばいいか困惑する方も多いのではないかと思います。

しかし、現状のように精神科のマイナスイメージが作られたのは、我々精神科医の責任でもあります。可知記念病院では科学的知見に基づいた標準的な医療を提供するとともに、個々の患者に共感し、寄り添う姿勢を忘れないことで、少しでも精神科という言葉のイメージ向上に貢献できればと思っています。