新型コロナウィルス(オミクロン株)の特徴2
今回の今回のblogは医局の担当です。
皆様の参考となるように、新型コロナウィルス(オミクロン株)について最近の情報をまとめてみました。
- オミクロン株に対するT細胞の反応はほとんどの感染者およびワクチン接種者で維持される
オミクロン株は抗体による中和反応を回避できる変異を有するが、スパイクおよび非スパイクタンパク質の変異がT細胞認識にどの程度影響するかは不明であった。この研究では、先行感染、ワクチン接種、先行感染とワクチン接種の両方、および追加ワクチン接種を受けた個人のT細胞応答がほとんど維持されていたことを示している。しかしオミクロン株スパイクに対するT細胞の反応性が50%以上低下している個体が約21%同定された(デルタ株の場合よりも高い頻度)。
(Cell. 2022 Feb 3)
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(22)00140-4
- COVID-19の急性期を生き延びた人々は、メンタルヘルス障害のリスクが高い
米国退役軍人省が、COVID-19急性期の生存者における偶発的なメンタルヘルス障害のリスクを推定するために、大規模なコホート研究を行った。SARS-CoV-2感染の最初の30日間を生き延びた15万3848人の群と、SARS-CoV-2感染の証拠がない現代の対照群(563万7840人)、ないしパンデミック前の歴史的対照群(585万9251人)を比較した。結果、COVID-19群は不安障害、うつ病、ストレスおよび適応障害、抗うつ薬の使用、ベンゾジアゼピンの使用のリスクが増加した。オピオイド等の物質使用生涯も増加した。またCOVID-19群では認知機能低下や睡眠障害のリスク増加が示された。以上からCOVID-19生存者ではさまざまな精神疾患の発症リスクが高く、メンタルヘルス対策を行うことは優先事項であるべきである。
(BMJ 2022;376:e068993)
https://www.bmj.com/content/376/bmj-2021-068993
- オミクロン株BA.2系統の重症度はBA.1系統と同程度である
初期のデータでは、オミクロン株BA.1系統による感染は、デルタ感染と比較して、入院および重篤な病気のリスクが低いことが示されていた。最近、オミクロン株BA.2系統が世界各地で増加している。BA.2系統はBA.1系統と比較して、感染力が強く、より重症となりやすいとの意見がある。今回、南アフリカにおけるBA.1系統とBA.2系統の重症度を比較した研究が報告された。入院率はBA.2系統で3.6%,BA.1系統で3.4%であり両者で差がなかった。入院した患者では、重症化に関連する因子を調整した後、重症化のオッズを調べると両者で差がなかった。以上より、BA.1系統とBA.2系統では同様の割合の個人が入院し、重症化することが分かった。
(MedRxiv . Feb 19, 2022)
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.02.17.22271030v1
- COVIDワクチン4回目の接種ではオミクロン感染に対してわずかなブーストしか得られない
COVIDワクチンの4回目の接種で中和抗体のレベルは上昇するものの、そのレベルは抗体価を3回目の投与後のピーク力価に戻す程度であり、ワクチンの効果が上限に達したことが示唆された。つまり、4回以上の接種は時間の経過とともに失われる免疫力を回復させるだけであった。また4回目の接種を行っても,軽症または無症状のオミクロン感染症の予防効果が低いことから、次世代ワクチン開発の緊急性が高まっている。ただし、この試験はプラセボ対照ランダム化比較試験ではなく、サンプル数も少ないため、不確実性が大きい可能性もある。
(MedRxiv . Feb 15, 2022)
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.02.15.22270948v1