今回のブログは医局が担当します。
自閉症の統合失調症説その後
統合失調症説が廃れた後、自閉症の研究は言語―認知障害説が盛んになり、ラターの報告(Psychological Medicine. 1974;4:147-163)がその好例。そしてその後は、皆さんご存知の心の理論仮説(Cognition. 1985 Oct;21(1):37-46.)や実行機能障害仮説(Trends Cogn Sci. 2004 Jan;8(1):26-32.)や弱い中枢性統合仮説(J Autism Dev Disord. 2006 Jan;36(1):5-25.)などなど、種々の仮説が打ち出されていますが、決定打は未だ出ていません。
他に、自閉症の原因として迷惑この上ないほど話題になったのは、MMRワクチン説。これはご存じのかたも多いでしょう。1998年、ウェイクフィールドが報告したもので、炎症性腸疾患に罹患していた子ども12人中8人がMMRワクチンを接種しており、接種した時期に自閉症のような症状が出現した、というだけの内容。これが何とLancetに載ってしまったのです(Lancet. 1998;351:637-641.)。「そんな感想文レベルが、大昔ならまだしも1998年でLancetに載ってしまうのか…」と愕然としてしまうような代物。それを否定する論文がその後にたくさん出て、Lancetも反省してウェイクフィールドの論文を撤回しました。「ワクチンは危ない」という考えはこの事件より前にありましたが、それを増幅させて広めた罪は大きく、Lancetも責任重大です。ちなみに、ウェイクフィールドは反ワクチン団体から資金を得ていたこと、そして論文の患者さんデータを捏造していたことが明らかになり(BMJ. 2011;342:c5347)、医師免許を剥奪されています。