新型コロナワクチンと治療薬についての情報

今回の今回のblogは医局の担当です。
皆様の参考となるように、新型コロナワクチンと治療薬についての最近の情報をまとめてみました。
新型コロナワクチンの3回目の接種がオミクロン株に効果があるということと、経口抗ウイルス薬のパクスロビドに期待が高まっていることがわかります。

米国調査において新型コロナワクチン3回目接種者は未接種者と比較して、オミクロン株優位の時期における入院予防効果が90%であった。
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7104e3.htm

新型コロナワクチンのブースター接種を終えた国内医師65人を対象にした調査で、全員がオミクロン株に対しても感染や発症を抑える「中和抗体」を持っていた。オミクロン株に対する中和抗体の保有率は、2回目接種の約2カ月後には23%、約半年後にはわずか5%だった。だが、3回目接種から2週間~1カ月後には、デルタ株や従来株と同様に100%に上った。中和抗体の量も、ブースター接種によって大幅に上昇した。
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202201/0014993882.shtml

mRNAワクチンを3回目接種した群では、オミクロン株に対する中和反応は従来型の4~6倍低いだけと強力であった。「6-12ヶ月前のワクチン+感染」の場合の中和抗体価はワクチン3回目接種後と比較してかなり低く、新型コロナウイルスに感染することそのものでは有効な免疫が得られないことが示唆される。(Cell. Dec 23, 2021.)

南アフリカにおいてファイザーワクチンのオミクロン株に対する入院予防効果はデルタ株の93%より低下するものの70%と維持されている。著者らは3回目接種を追加することで、このようなワクチン効果の低下を軽減できる可能性があると述べている。(New Engl J Med. Dec 29, 2021.)

新型コロナワクチンの2回接種後のオミクロン株に対する中和力価は低く、ブレイクスルー感染のリスクが高い可能性がある。しかしモデルナワクチンの3回目接種後はオミクロン株に対する中和力価を2回接種のみと比べ20倍も高め、ブレイクスルー感染を大幅に減少させる可能性がある。(New Engl J Med. Jan 26, 2022)

ファイザーワクチンの2回接種後の血清はオミクロン株に対する中和力価が武漢株より22倍低下した。一方3回目接種後1カ月で、オミクロン株中和力価は2回接種後の23倍まで上昇した。(Science 2022 Jan.18)
https://science.org/doi/10.1126/science.abn7591

ファイザー社の経口抗ウイルス薬ニルマトレルビル・リトナビル(パクスロビド®︎)は経口投与が可能で、優れた選択性と安全性プロファイルを有し、マウスモデルにおいて感染から保護されることが確認された。また,COVID-19のみでなくSARSおよびMERSなど他のコロナウイルスも阻害し、将来のウイルスの脅威に対する武器になる可能性がある。(Science 374;1586-1593, 2021)

入院予防をアウトカムとした各抗コロナ治療薬のNNT(数値が小さいほど効果が高い)は以下であった。特にパクスロビドは高価だが入院コストを考慮するとむしろ医療費を軽減するという結果であった。
ニルマトレルビル・リトナビル(パクスロビド®︎)24
ソトロビマブ(ゼビュディ®︎)25
カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ®)29
モルヌピラビル(ラゲブリオ®)50 ok
吸入ステロイド72
フルボキサミン80
コルヒチン91
https://academic.oup.com/ofid/advance-article/doi/10.1093/ofid/ofac008/6511388r

低酸素症および全身性炎症を伴う新型コロナウイルス患者にトシリズマブ(アクテムラ®)を投与したところ、侵襲的人工呼吸の導入または死亡する可能性が低く、28日以内に退院する可能性が高かった。(Lancet 2021;397:1637-45)
https://thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)00676-0/fulltext

重症化リスクを有するコロナ患者に対する、発症から7日間以内のレムデシビル(ベクルリー®)投与は入院・死亡リスクを87%減少させた。(N Engl J Med 2021, Dec22)
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2116846