今回は医局が担当します。

睡眠と不眠症

 今回は睡眠と不眠症のお話です。
人にとって、睡眠はとても大切なものです。睡眠には「脳と身体の休養」「疲労の回復」「記憶の固定」「感情の整理」「免疫機能の向上」などの多くの役割があります。このため、寝つきが悪かったり、途中で目が覚めたり、朝早く目が覚める、あるいは睡眠の質が悪いと、疲れが蓄積するようになってしまいます。この状態が続くと、日中に眠気が残ったり、集中できなかったり、気分が不安定になったりと、生活に支障が出てきてしまいます。ここまで来ると、不眠症という診断がつき、治療が必要になります。
 治療の初めに、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群、ナルコレプシーなどの睡眠障害がないか確認をします。問診の結果、睡眠専門の病院での検査をお勧めすることもあります。これらの睡眠障害にはそれぞれの治療法があります。
 そうでない場合は、不眠症の治療の開始になります。

不眠症の治療

まず、睡眠衛生指導が行われます。毎日なるべく決まった時刻に寝起きする、日中に日光を浴びる、寝る前のカフェインやスマートフォンを避ける、寝る少し前にぬるめのお風呂にゆっくり入る、などです。心理的ストレスやアルコールの摂りすぎも原因となるため、改善していきます。
睡眠薬を使っていただくこともありますが、その前に、また睡眠薬を飲み始めた後も、睡眠衛生指導を繰り返し行うことがとても大切だと思っています。
というのも、睡眠薬は「生理的な、質の良い睡眠」を無条件で与えてくれるものではないからです。心理的なストレスや乱れた生活習慣を放置したまま、外から無理に睡眠をとらせても、「脳と身体の休養」「疲労の回復」「記憶の固定」「感情の整理」「免疫機能の向上」などは見込めません。
 睡眠薬を使うときは、睡眠が生理的に整うまでのピンチヒッターとして、主治医とよく相談して、期間を区切って上手に使うのが良いと思います。この時も、安全性の比較的高いオレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ、デエビゴ)やメラトニン受容体作動薬(ロゼレム)が優先されますが、場合によってはベンゾジアゼピン受容体作動薬(一般的に睡眠薬と呼ばれるもの)も使われるでしょう。
長期的に、あるいは複数の睡眠薬を飲んでおられる方もおられます。「良くない」と言うことは簡単ですが、様々な経緯でそうなっているのであり、そのことを無視して一概に良くない事だとは言えません。大切なのは、現在の治療方針について、これからどういう状態を目指していくかについて、主治医と考え方を共有している事だと思います。可能であれば、減薬を目指すことも良いでしょう。この場合は、原則ゆっくりしたペースで減らすことになります。

睡眠薬についての雑感

 最後に、よく使用する睡眠薬についての雑感を記させていただきたいと思います。個人的な所感ですので、軽く読み流していただければと思います。利益相反はありません。
新しいオレキシン受容体拮抗薬であるデエビゴは、寝つきを良くし、中途覚醒も少なく良く眠れれる印象です。2.5mg5mg10mg3つの剤形があり、標準量の5mgだと日中少しぼんやりすることもあるので、2.5mgと少ない量から開始するのも良い選択と思います。
ベンゾジアゼピン系薬物と少し構造の違う「Z系」と呼ばれるゾルピデムとルネスタですが、ゾルピデムはいつの間にかスッと眠っている感じ。眠る前の健忘や幻覚が僅かばかり多い印象です。ルネスタはこうした副作用がより少ないと思いますが、口の中の苦味がしばらく続くこともあり、合う合わないがあるでしょう。苦味が平気であれば、よく似たアモバンというお薬の方が経済的ではあります。
ベンゾジアゼピン系ではブロチゾラムはバランスが良いと言われたりしますが、割と強く、押さえられるように眠りに持っていかれる感じです。強い不眠症で苦しんでいる時には一定の助けになるでしょう。ただしイビキの強い方などは無呼吸に注意が必要です。特にアルコール摂取とは相性がかなり悪いので、お酒は我慢することを強くお勧めします。