うつ病
うつ病は、気分障害の一つで、主に気分が落ち込むという症状が長期にわたって続く精神的な病です。うつ病は精神的な不調だけでなく、身体的な症状も現れ、個人の日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
うつ病の主な症状
- 気分が落ち込む
- 今まで楽しかったことが楽しめない
- 億劫でやる気が起きない
- 仕事などで些細なミスが増える
- 自分自身を責めたり、価値が無いと考える
- 眠れなくなったり、逆に寝すぎてしまう
- 食欲の減退や増加
- 体重の減少や増加
など
うつ病の原因
うつ病は様々な原因によって引き起こされますが、原因は一つではなく、色々な要素が複合的に関係しています。
具体的には、以下のような要因が考えられます。
神経伝達物質の不均衡: 脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスが崩れると、うつ病が発生することがあります。
- ストレス: 職場や家庭での激しいストレス、重大な生活の変化、トラウマ体験などが引き金となることがあります。
- 遺伝的要因: 家族にうつ病の人がいる場合、発症リスクが高まることがあります。
うつ病の治療と療養中における注意点
うつ病の治療は「休養」と「薬物療法」が軸になりますが、うつ病療養中においては注意点があります。
休息能力の喪失
うつ病の治療においては休養が大切なのは言うまでもありませんが、休息能力が失われることがうつ病の特徴でもあります。つまりうつ病患者は思考の柔軟性が失われているため、オンとオフをうまく切り替えることができず、自宅療養を指示されても当初はなかなか気が休まりません。会社勤めの人は「家庭よりも会社の方が落ち着く」などと言ったりしますし、主婦の場合は家庭が職場であるため、そもそも自宅では心が落ち着きません。したがって、休むことがうつ病患者の仕事(病者の役割)であると理解したうえで、休養中は何もしない時間を意識して作る必要があります。治療が進み、気持ちに「ゆとり」が出て、自宅療養が「退屈」と思えるようになれば回復が近いといえます。
抗うつ薬は効果が現れるまでに時間がかかる
睡眠薬などと異なり、抗うつ薬は効果がはっきりするまで2週間程度かかります。一方で胃腸症状や眠気などの副作用は治療が始まってすぐに認めることが多いため、抗うつ薬を少量ずつ増やして慣らしていく必要があります。抗うつ薬の量が増えると、うつ病が悪化したからだと悲観的に捉える人もいますが、増薬はもともと予定されていたものであり、必ずしも症状が悪化したから増やすわけではありません。
抑うつ症状の変動
抑うつ気分などのうつ病の症状の強さは「朝に調子が最も悪く、夕方になると少し楽になる」パターンが多いです。また、回復していく過程でほぼ必ず日によって調子の波が出てくるため、変化に振り回されず無理をしないことが大切です(一進一退・三寒四温)。調子の揺り戻しがあった際には悲観的になりすぎず、全体として回復が進んでいる証拠と考えるくらいでよいでしょう。順調に回復して社会復帰が見えてくるとすぐに完ぺきを目指す人が多いのですが、活動が多すぎると疲れてしまうし、少なすぎても自信がつかないということで、ほどよい「さじかげん」を目指すことになります。疲れすぎるとかえって、こだわりや几帳面さが出てイライラしたり、普段なら気にかけないことが大きな問題のように見えたりしてしまうことがあります。
うつ病と双極性障害(躁うつ病)との違い
抑うつ症状を認めても必ずしもうつ病とはかぎらず、双極性障害という別の病気の可能性があります。うつ病と双極性障害は治療法が異なるため、しっかり区別することが治療において大切です。今現在、抑うつ症状を認めていても、過去に躁症状(気分高揚、多弁、浪費、怒りっぽいなど)を認めたり、抗うつ薬が効きにくかったりする場合に双極性障害が紛れている可能性があります。双極性障害は抑うつ症状から始まることも多く、抑うつ症状を認めて外来受診した人の16%は双極性障害であったと報告されています。
抗うつ薬の中止による再燃リスク
抗うつ薬には再発予防効果を認めるため、抑うつ症状がなくなってもしばらく飲み続ける必要があります。最近の論文によると、抑うつ症状が改善し、長期間抗うつ薬を内服していた人でも、中止することで再発リスクが高まることがわかりました。つまり、うつ病の症状がない状態が長く続いても、抗うつ薬の中止については慎重に考える必要があるということです。