豊橋市にある精神科の可知記念病院です。
今回のblogは医局の担当です。

抗うつ薬のマイナーな副作用:SIADH

抗うつ薬には副作用―メジャーなものからマイナーなものまで―があります。マイナーなもののひとつがSIADHです。「SIADHを見たら薬剤性を疑え」の格言の通り、SIADHの70%以上が薬剤性、特にも抗うつ薬によるものが多いようです(Br J Pharmacol. 2017;83:1801–1807.)。高齢者(特に女性)や治療初期がハイリスク(J Am Acad Nurse Pract. 2008 Jan;20(1):47–51. J Gerontol Nurs. 2010 Apr;36(4):22-7; quiz 28–29.)。SIADHによる低Na血症は見過ごされがちであり、少し元気がなかったり眠気があったりというのを「うつ病だから」と誤解されてしまうかもしれません。さらに、低Na血症は死亡リスクにもなるため(Arch Intern Med. 2012 Oct 22;172(19):1474–1481.)、「もしや?」と気づくことがとても重要。抗うつ薬によるSIADHのメカニズムは詳細には分かっていないのですが、リスクは抗うつ薬の種類によって異なるようで、SNRI(7.44%)、SSRI (5.59%)、三環系(2.66%)の順番だそうです。リスクの低いものはミルタザピン(1.02%)、トラゾドン(0.89%)となっています(Eur Psychiatry. 2024 Feb 26;67(1):e20.)。