豊橋市の精神科の可知記念病院です。
今回のblogは医局の担当です。
軽度認知障害(MCI)とは
軽度認知障害(MCI)とは認知機能が以前よりも低下しているが、日常生活機能は保たれており、認知症ではない状態を指す概念です。MCIは認知症の前段階とされ、1年あたり約10%が認知症に進展するとされています。一方で認知機能が正常に回復するケースも1年あたり約20%認めるため、認知症予防に影響する要因の研究が続けられています。昨年からアルツハイマー型認知症の病態を持つMCIに対して抗アミロイドベータ薬のレカネマブが使用可能になり注目されています。
[MCIの症状]
1.記憶障害
同じ話や質問を繰り返したり、行動しようとしたことや物を置いた場所などを忘れたりします。時間をかければ自力で思い出せることもありますが、部分的にしか思い出せないこともあります。
2.時間の見当識障害
今日の日付や曜日を覚えていないことがあります。約束の日を忘れてしまうこともあります。
3.実行機能障害
仕事や家事(料理や掃除、洗濯など)、買い物、グループ活動などの日常生活動作に困難を感じることがありますが、部分的には実行できます。
4.注意力障害
計算が困難となったり、判断力が低下したりすることがあります。
5.言語障害
会話において具体的な単語が出ず「あれ」「それ」などを多用します。また、会話の理解力が低下し、流ちょうに会話することが困難になることがあります。
6.視空間認知障害
外出の際に迷子になることがあります。視覚的に対象を捉えることが困難となり、時計などの図形の模写ができなくなります。身の回りのものが、人の顔などに見えることがあります。
7.神経精神症状
認知症の行動・心理症状(BPSD)に該当する神経精神症状を、35~85%のMCI患者に認めます。具体的な症状としては、うつ、不安、短気、不眠、異常行動、幻覚、妄想などです。
[MCIから認知症への進行予防法]
1.運動
身体活動や運動は認知機能低下に抑制的に働くことが示されており、積極的に行うことが推奨されます。
2.食事
魚類、野菜、果物などの個々の食品だけではなく、地中海食や日本食などの食事パターンも認知症予防に有用です。
3.社会的交流
ビデオ通話などを含む人との交流は認知症発症リスクを軽減できる可能性があります。
4.知的活動
認知トレーニングや楽器演奏、手工芸、PCの利用などは認知症発症リスクを軽減できる可能性があります。
5.生活習慣病予防
中年期の高血圧や高脂血症、肥満、糖尿病の治療によって、認知症発症リスクを軽減できる可能性がありますが、高齢期については十分なエビデンスがありません。
6.飲酒・喫煙
週に192g以上または1日に27.5g以上のアルコール摂取で認知症のリスクが高まります。喫煙も認知症の危険因子ですが、禁煙介入によってリスクを軽減できる可能性があります。
7.補聴器の使用
聴力障害は認知機能低下の危険因子ですが、補聴器の使用によってリスクを軽減できる可能性があります。