豊橋市の精神科の可知記念病院です。
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パーソナリティ症について:補遺

前回は、DSMやICDのパーソナリティ症(パーソナリティ障害)の分類について述べました。今回はおまけですが、フォナギーの考えを少しだけ。彼はパーソナリティ症を“a problem of epistemic trust(認識論的信頼における問題)”と言っています(J Pers Disord 2015;29:575–609)。対人関係においてその個人に関連した信頼できる情報を認識する能力、これに問題を抱えている状態なのです。認識論的信頼は適応と成長を促進する方法であり、他者から学ぶことにこころを開けるようにする、と言ってしまえば単純ですが、そこに問題を抱えることで、人と交わることによって得られる安定/変化を邪魔する、頑なな思考になってしまいます。パーソナリティ症ではこの信頼における問題があるため、対人関係での不安定さが繰り返し見られているにもかかわらず、経験による学習が限られてしまっています。この頑なな思考のパターンと対人関係の不安定さのパターンによって、パーソナリティ症が分類されていると考えてもいいかもしれませんね。