豊橋市の精神科の可知記念病院です。
本日のブログは医局が担当いたします。
疾患/障害非特異的な精神症状
精神症状は疾患/障害非特異的であり、一つの症状が多くの疾患/障害に認められます。不安は発熱のようなもので、抑うつは痛みのようなものなのです。このように、身体疾患や精神障害に広く見られる症状であるため、「うつ症状があるからうつ病」という短絡的な考えを決して持ってはいけません。特に、精神障害の中では統合失調症と双極症(双極性障害)の2つは、必ず除外すべき障害です。また、個々の精神障害も単一の疾患として抽出されたものはいまだ存在せず、例えばDSMやICDの診断基準を満たしていたとしても、統合失調症やうつ病は、そう“呼び習わしている”一群に過ぎません。症状のまとまりでとりあえず線引きをし、暫定的な合意としているのが現代精神医学の分類法であることは、覚えておいて損はないでしょう。
現在私たちが手にしているエビデンスも、そう名付けられた患者さんを対象としたものであり、そこには本来であれば多種多様なはずの像が十把一絡げとなっています。しかしながら、逆を言えば、混沌に“名付ける”という行為で分節化を図り、途上ながらもいくばくか前進してきたということでもあるでしょう。私たちが今できるのは、現代精神医学を過大評価も過小評価もすることなく治療に応用し、これからの進展に期待しながら耐えることなのかもしれません。