豊橋市の精神科の可知記念病院です。
本日のブログは医局が担当いたします。

言葉の解釈

「食欲が出ないんです」「貧血で良く倒れます」「おじいちゃん認知症で、徘徊するんです」。症状は言葉を介して伝えられることが圧倒的に多いでしょう。しかし、言葉は正確でないことが往々にしてあります。“何か”が起こり、それを表現しようと人は言葉を使い、それを受け手がさらに解釈をして言葉の伝達は成り立ちます。少なくとも表現と解釈の2点で、本来の現象の意味からズレることがあるのです。
「食欲が出ない」という発言を“食欲不振”と受け取っては不正解なことがあり、実は発言が“腹部膨満”を指している可能性もあるのです。「お腹が張る感じがして何とも嫌な気分になる」を「食欲が出ない」と患者さんは表現しているかもしれません。
“貧血”も、医療者のイメージするHb低下としての貧血ではなく、「立ち上がると目の前が真っ暗になって倒れそうになる感覚」「歩いているとクラクラする感覚」を言葉にしようとして「貧血で…」と口にしていることもあります。
“徘徊”についても同様で、観察者が「認知症だし、訳もなくうろうろしているから徘徊だろう」と考えてしまうと、ただの徘徊に見えます。しかし、歩きまわるその人は、ひょっとしたら身体に痛みがあってじっとしていられないのかもしれません。何をしてもうまくいかなくなってきている自分にイライラしているのかもしれません。お薬の副作用でそわそわしているのかもしれません。側頭葉てんかんの自動症なのかもしれません。また、いわゆる常同行為としてうろうろしているのかもしれません。
医療者は専門用語で解釈しますが、その専門用語はほとんど一義的。それに当てはめると奥行きがなくなり、また他の考えが出てこなくなってしまいます。できるだけ患者さんの生の言葉や行動をとらえ、言葉であれば何を表現したがっているのか、行動であればどんな意味があるのか、ということに思いを馳せてみましょう。解釈が異なると、対応も異なってきます。