豊橋市の精神科の可知記念病院です。
本日のブログは看護部が担当いたします。

背負いすぎない

「自分には価値がない」「自分は周囲の迷惑だ」と感じている方とお話することがあります。 しかし第三者から見れば必要以上に深刻に考えすぎている、そんな風に思う必要はないのに…ということが珍しくありません。 この認識の違いはどこから来るものなのか、どう向き合うべきかを考えました。
例えば「自分は人より劣っているからダメだ」「働いていないからダメだ」と言う方がおられます。でも人より劣っていること、働かないことで自己否定的になる必要はありません。その方が生きていることで物やサービスを消費する、それを評価するだけでも社会における価値はあります。その方自身が生産的でなくても、その方がいることによって他の人が頑張れることもあります。人間は色々な繋がりの中で生きていて、その方がいるから社会が頑張る、福祉の人が頑張るなど色々な側面があり、ひいては全ての人に価値があるということです。 それをどうしたら伝えられるかが重要と考えます。 もちろん並行して心理教育、疾患の治療、福祉の導入も必要とされます。現実的な対応もしつつ、人間の価値や人権ということを理解することが重要と考えます。
米国の社会学者であるタルコット・パーソンズは「病人役割」という概念を提唱しました。『病人はひとつの社会的地位であり,通常の健康状態とは異なった役割期待が伴う』というものです。例えば病人が通常通りの能力を発揮しなくても,周囲の家族や同僚はそのことを問題視しません。そこから通常の義務を免除され、その一方で病人はできるだけ早く病気の状態から回復されるように期待されます。つまり一般社会生活における義務や責任感などに縛られず回復に専念してください、といった考えです。
ひとつのミスや間違いがメディアやSNSで過剰に叩かれがちな昨今ですが、自身に求められる役割が何なのか?過度な期待を背負わされていないか?一度落ち着いて振り返ってみる時間も必要なのではないでしょうか。他人の意見に流されすぎず、ほどほどに楽観的であることも、自身や周囲の大切な存在を守るひとつの方法かも知れませんね。