豊橋市の精神科の可知記念病院です。
本日のブログは歯科が担当いたします。
骨粗鬆症と歯科治療
歯科では初診の際、診療申込書という用紙に持病や服薬について記入をお願いしています。
「お薬は飲んでいるけど、歯科治療には関係しないだろう」「持病についてはあまり言いたくない」と思い、記入しないかたもいらっしゃるようです。
しかし、病気やお薬によっては、歯科が知らないまま治療を進めてしまうと、生命の危険が生じたり、治療後に痛みや腫れが続いたり、治りが悪くなったりと、患者さんが苦しい思いをされることがあります。
とくに病気やお薬の情報が大切になるのは、抜歯などの外科的な治療を受けられるときです。いろいろな病気やお薬が影響するのですが、今回は【骨粗鬆症とそのお薬】についてお話します。
- 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とはどのような病気なのでしょうか?
『骨の強度が低下してもろくなり、骨折しやすくなる病気』です。
骨は骨芽細胞によって骨形成される(骨を作る)と同時に破骨細胞によって骨吸収され(骨を壊す)、常に新しく作り直されるという新陳代謝(骨代謝)を繰り返しています。通常は骨吸収と新たな骨形成のバランスが保たれていますが、これが崩れて骨吸収が上回った状態が続くと骨量が減少してしまいます。その結果骨がもろくなり、容易に骨折するような状態になるのが、骨粗鬆症です。
原因としては、骨を形成するカルシウムやマグネシウムの不足や、カルシウムの吸収に必要なビタミンDなどのビタミンがバランスよくとれていないことが挙げられます。また適度な運動によって骨に一定以上の負荷をかけないと骨形成におけるカルシウムの利用効率が悪くなるため、運動不足も骨粗鬆症の要因となります。
一般に高齢女性の発症リスクが高くなっていますが、それは閉経後、骨芽細胞を活発にする女性ホルモンである「エストロゲン」が激減するためです。大豆に含まれるイソフラボンは、エストロゲンに似た働きをしてエストロゲンの減少を補うため、骨粗鬆症の予防・改善に効果があると考えられています。(参考文献:厚生労働省 e-ヘルスネット)
- お薬の目的と作用は?
『骨吸収を抑える作用』があります。
骨代謝のバランスが崩れ、破骨細胞による骨吸収のほうが増えている状態ですので、骨吸収を抑制して、骨量が減らないようにしなくてはなりません。そのためのお薬が骨粗鬆症のお薬で、骨吸収を抑制することから「骨吸収抑制剤」と呼ばれます。いくつか種類がありますが、ビスフォスフォネート(BP)製剤がとくに知られています。飲み薬のほかに注射薬もあります。
- 歯科治療との関係は?
骨粗鬆症はからだの骨だけでなくあごの骨にも影響します。
骨粗鬆症のお薬を飲んでいるかたは、骨代謝を人為的に変えるお薬の影響により、抜歯などの外科的な治療を受けた後に「あごの骨の壊死」(顎骨壊死)が起こることがあるのです。頻度は推定0.1%(飲み薬の場合)と多くないものの、一度発症すると治りにくい、非常につらい病気です。
- 歯科からのお願い
『必ずお薬について教えてください』
万一の顎骨壊死のリスクを避けるため、骨粗鬆症のお薬や注射を使用しているかたは必ず教えてください。お薬の影響は数ヵ月残りますので、数週間前に使用をやめたというかたも忘れずにお伝えください。
『医科の主治医との相談が必要です』
歯科治療を受けることが可能か、治療に際しお薬を止めるか止めないかは、医科の主治医と相談して決めていきます。患者さんの骨粗鬆症の病状や、お薬をどれくらいの期間使用しているかで、治療を受けられるかどうかは変わります。(参考文献:nico 2022.06)
~当院は、入院患者さんや通院患者さんはもちろんのこと、歯科のみの受診も可能です~