豊橋市の精神科の可知記念病院です。
今回は医局が担当します。

家族面談の心構えその2

家族面談の中での心理教育で大切なのは、特に患者さんが若い場合は“親のせいにしない”こと。ご家族、特に親御さんは「私の育て方が悪かったんじゃ…」と多かれ少なかれ思います。確かにその部分は無きにしも非ずだろうな…と感じない場合もないわけではないのですが、それが明らかな原因とはもちろん言えません。言ったところで時間は巻き戻せませんし…。やはり原因は“不明”であるとし、そのうえで親御さんのこれからの関わりは影響力を持つことをお伝えしましょう。ご家族の力はとても大きいのは事実であり、だからこそそれを希望にしてもらいたいものです。「影響力が大きいんだ…」と不安に感じて、腫れ物に触るようになってしまうと逆効果。医療者は折に触れてご家族とお話をして、その力がいい方向に発揮されるように支援していきたいですね。

そして、家族面談では、お互いの考えをまさに“なぞって繰り返す”ことが大事です。患者さんの意見、ご家族の意見、そして医療者の意見。それらを提示して、一緒に考えていきましょう。私たち治療者は仲裁者ではありません。色んな意見、色んな見方があるのだということを、なぞって繰り返して確認していき、察しがよすぎないようにご注意を。察しがよすぎると、「先生はすぐにわかってくれるのに、なんであなたは…!」という、家族内紛のような状況に陥ってしまいます。しっかりと言葉を使ってもらって、それをなぞりましょう。また、先ほど“医療者はどうしても患者さんに肩入れしてしまう”と述べましたが、完全中立ではなくほんの少しは肩入れしておくのが好ましいと思います。やっぱり医療者は患者さんの味方ですからね。ついご家族の話を多く聞くと、患者さんが「やっぱり先生も親の話の方を聞いちゃうんだ…」と思ってしまうこともあります。ご家族の話を聞く時もきちんと目線を患者さんに送る、キリのいいところまで聞いたらなぞって繰り返して患者さんに「親御さんはこうおっしゃっているけど、○○さんはどう?」と問う、といった工夫をして、患者さんへの配慮は厚めにしておきます。他には、目標をある程度明確にしておくことも大切です。患者さんはどうなりたいのか、ご家族は何を期待しているのか、というのを聞き取っていきましょう。患者さんとご家族がどの方角を向いているのかを把握しておくのです。

家族面接に限りませんが、患者さんやご家族の使う日常語の意味が、私たちの思う意味とはズレていることがあります。“よくなる”という言葉も、患者さんの思う“よくなる”、ご家族の思う“よくなる”、そして私たちの思う“よくなる”は、果たして同じでしょうか? 日常語は多義的なので、少しでも引っかかるようなら「○○さんの言う“よくなる”って、どうなることかしら? 教えてほしいんだけれども」と、聞いてみて、それをみんなで共有していきます。