豊橋市の精神科の可知記念病院です。
今回のブログは医局が担当します。
治るということ
精神科では通院が長くかかってしまうことも多くあります。中には、高血圧や糖尿病のように、お薬と長いお付き合いを必要とする病気も確かにあります。いっぽうで、それは高血圧や糖尿病のように、お薬が予防の役割をいくばくか果たせることでもあります。
精神障害の中で、うつ病や不安症は、お薬をやめることが可能な病気の代表例です。とはいえ、やめると30~40%の患者さんが再発してしまうと言われています。そして、うつ病を複数回繰り返している患者さんでは、お薬をやめるとその再発もより多くなってしまうことが示されています。精神科医も可能であればお薬をやめたり減らしたりしたい気持ちはありますが、再発のリスクは常に頭をよぎります。
そこで、患者さんに意識してもらいたいのは、“治る”という意味。お薬で症状が良くなっても、そのお薬を中止しただけでは再発する可能性が高くなります。大事なのは、病気を経た後の過ごし方。患者さんの中には「治る=もとの生活に戻る」と思っているかたが多くいます。しかし、それでは病気になる前と同じであり、お薬をやめると再び病気になるかもしれないのです。すなわち、“病気の種”がある状態。いつまた病気が芽吹くか分からないとも言えます。それを踏まえると、治るということは、もとの生活でどこか無理がたたっていたところを見つめ直して、よりしなやかな新しい生活に進んでいくことなのです。「病気になる前は、どこに無理があったのだろう」と考えて、病気の後の生活を思い描いてみてほしいと思います。どうしてももとに戻りたくなるものですが、そうではなく新しい生活に一歩進む勇気が、再発の可能性を押し下げてくれることでしょう。