大人の自閉スペクトラム症(発達障害)の理解
今回のblogは医局の担当です。
最近では様々な媒体で発達障害という言葉をよく見かけるようになりました。仕事や学業などの集団生活ではコミュニケーションが苦手ないわゆる「変わり者」に対して発達障害というレッテルが張られることもあるようです。最近、専門家の間では健常者と二分する「発達障害」という用語の代わりに「自閉スペクトラム症」という特性の強さをグラデーションで考える概念が主流になりつつあります。自閉スペクトラム症の特徴である「ものの見方の偏り」や「コミュニケーションの偏り」は程度の差こそあれ、われわれ誰にでもある程度は認めるものです。もちろん、重度の自閉スペクトラム症の方々には専門的な支援が必要ですが、「集中して作業を正確にコツコツ続ける」など自閉スペクトラム症者の特性が、生活の中で長所として生きる場面もあります。今回は大人の自閉スペクトラム症の理解のために、その特徴について簡潔にまとめてみました。
ものの見方の偏り
自閉スペクトラム症者は、物事を全体ではなく部分でとらえる傾向があり、大事なところに注意が向かないことがあります。また抽象的が概念への理解が難しく、具体的な説明がなくても多くの人が何となく理解できることが分からず「空気が読めない」と指摘されることがあります。イマジネーションの偏りのため「もし~なら」といった仮定の話題が苦手で、枝分かれしない一本道の考え方を好み、臨機応変な対応が苦手です。刻々と状況が変わる場面では見通しが立たないため不安が強まりやすく、反対に「いつも同じ」環境だと安心できます。従って、自閉スペクトラム症者に仕事を頼む際は、口頭ではなく、具体的かつ明確に文書で指示することが望まれます。文書のような視覚情報であれば、途中で混乱してしまっても、立ち止まって確認することができるからです。
コミュニケーションの偏り
他人の感情を読み取れず、場にそぐわない発言をしたり、自分が興味のある内容を繰り返し話したりするため、周囲を当惑させることがあります。また、非言語コミュニケーションや比喩や例えが苦手なため、皮肉などを文字通りにとらえます。大勢での雑談的なコミュニケーションが苦手で、例えば立食パーティーのような何となく自由に人が集まったり離れたりする状況では、会話に適切なタイミングで加わることに困難を感じることがあります。従って自閉スペクトラム症者にとっては、複雑なコミュニケーションが必要な仕事よりも、職人のように集中して積み上げるような仕事の方が向いているかもしれません。
感覚過敏
自閉スペクトラム症者は音や光などの外部からの刺激に対して過剰に反応してしまうことがあります。例えば、他の人にとっては気にならない程度の音でも、耐えられないくらい大きく苦痛に感じたりします。また、周囲の雑音から1つの音を聞き取るのが難しく、目の前にいる人との会話に集中できないという人もいます。蛍光灯などの光を眩しく感じたり、テレビ・パソコンの短時間の使用でも疲れたりするなどの視覚過敏もしばしば認めます。これらは疲れやストレスが溜まってくると症状が出やすいようです。従って自閉スペクトラム症者が働く場面では過剰な音や光を避けるような工夫が求められます。