可知記念病院は
認知症疾患医療センターの
指定医療機関です
認知症疾患医療センターは、認知症患者とその家族が住み慣れた地域で安心して生活するための支援の一つとして、都道府県及び政令指定都市が指定する医療機関に設置するもので、保健・医療・介護機関等と連携を図りながら、認知症疾患に関する外来・鑑別診断、専門医療相談、認知症の行動・心理症状と身体合併症への対応等についての相談などを行う専門医療機関です。豊橋市・東三河地域の精神科基幹病院である当院では令和5年8月1日より愛知県の指定を受け、認知症疾患医療センターを開設いたしました。
認知症は、早期発見・早期診断・早期治療がとても重要です。原因疾患によっては、症状が軽い段階で適切な治療を行うと、治るものや、進行を遅らせることができるものもあります。認知症に関する悩みや心配事がありましたら、当院認知症疾患医療センターにご相談ください。
可知記念病院 認知症疾患医療センター
- 相談受付時間
- 当院診療日:9:00~17:00
- 認知症専門外来
- 月曜日:13:30~15:30/
金曜日:9:30~12:00/
土曜日:13:30~15:30※認知症専門外来以外でも認知症の診察対応は可能です。
愛知県認知症疾患医療センターについて
認知症疾患医療センターの業務内容
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専門医療相談業務
認知症に関する専門知識を有する相談員(精神保健福祉士、看護師等)が、本人や家族、関係機関からの認知症に関する医療相談を受け付けています。
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認知症の鑑別診断とそれに基づく初期対応
- 各種検査
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- 診断に必要な各種検査を行います。
- ・公認心理師による認知機能検査
- ・CT・MRI・SPECTなどの画像診断
- ・血液検査
- ・脳波検査
- 医師による診療
- 各種検査結果が揃いましたら、医師より診断結果や今後の診療について説明させていただきます。
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認知症の行動・心理症状と身体合併症への急性期対応
認知症の行動・心理症状に対する急性期入院治療を行う他、重篤な身体合併症に対しては、連携病院(豊橋市民病院)と連携体制を整えています。
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地域連携の推進
地域の連携体制の強化のため、保険医療関係者、地域の介護関係者、地域包括支援センター、保健所等と認知症に関する支援体制づくりに関する検討を行います。
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地域の医療従事者、認知症患者や家族等に向けた研修会開催
地域の医療従事者、認知症患者や家族等向けに、認知症対応力の向上を図るための研修等を行います。
センター長あいさつ
近年わが国では高齢化の進行に伴い、現在500万人を超える認知症患者がいると推定され、今後これがますます増加すると予想されています。そんな中で当院でも従来から精神症状や行動面での問題が著しい認知症患者や身体疾患を伴う認知症患者の治療を重点項目の一つとして力を入れ、平成30年には認知症治療病棟を設置し、運営してまいりました。
さて、一口に認知症と言いましても、原因は様々です。そしてその原因によってその後の治療方針も変わってきます。また一部ではありますが、治療により著しい改善を期待できる場合もありますので、ご自身、またご家族が認知症ではないかと疑われた際にはまず受診を検討していただけたらと思います。また重要なのは医学的診断だけではありません。一人一人の置かれている状況によってその後に必要とされる支援も大きく変わってくると言っても過言ではありません。当院でも医師、看護師、公認心理師、精神保健福祉士などと連携を取り、その方の認知症の病態、進行度、置かれている状況を考慮した治療、サポートの提供に努めてまいります。また精神科病院への受診にためらいがある方も少なくないかと思われます。そんな方には専用の回線も設置しましたので、まず電話で相談していただくこともできます。
令和5年8月に当院は愛知県から認知症疾患センターの指定を受けました。これにより当院も従来から行ってきた認知症の診断、治療、相談などにとどまらず、地域包括支援センター・介護保険事務所・医療機関など各機関との連携拠点としての機能や、研修、広報活動の役割も期待されることになりました。重責ではありますが、認知症疾患医療センターの設置目的でもある認知症患者と家族が住み慣れた地域で安心して生活する環境作りに少しでも役立てるように、今までの当院での経験を地域にフィードバックしていきたいと考えています。
可知記念病院 認知症疾患医療センター
センター長 高林 功
認知症とは
認知症とは加齢に伴い、さまざまな原因で脳の細胞が死んだり、働きが悪くなったりすることで、記憶力や判断力などが低下し、社会生活や対人関係に支障が出る病気です。年齢を重ねるほど発症する可能性が高まり、今後も認知症の人は増え続けると予想されています。進行を抑制する薬は何種類かあるものの、残念ながら根本的な治療法はまだ見つかっていません。症状や脳画像所見などから認知症を分類しますが、死後の剖検では異なる診断になることも多く、診断方法もまだまだ発展途上なのが現状です。
認知症の症状
認知機能低下
記憶障害
- 何度も同じことを話したり、聞いたりする
- 物をしまった場所や約束を忘れる
- 火の消し忘れや薬の飲み忘れがある
注意障害
- 注意力や集中力が低下し、同時に2つのことがしづらくなる
- 会話についていけなくなる
- すぐに気が散ってしまう
言語障害/理解力の低下
- 適切な言葉が、なかなか出てこない
- テレビの内容や相手の話が理解できなくなる
- 意味が通じない言葉を話している
見当識障害
- 今がいつか(時間)、ここがどこか(場所)がわからなくなることがある
- 季節にあった服装が選べなくなる
- 家族や友人がわからない
実行機能障害
- 家事や仕事の段取りが悪くなる
- 計画的な買い物ができない
- リモコンなどの電化製品の使い方が分からない
行動・心理症状
症状はとても多彩です。ただし、どのような症状が起きるかは認知症の原因や本人の性格、人となり、周囲の環境などによって変わってきます。
暴言・暴力
感情のコントロールがしづらくなり怒りや衝動を抑えられない
無為・無関心
やる気がおきず、当たり前に行っていた習慣すら面倒くさくなってしまう
不安・うつ
できないことが増え自信を失い、気分が落ち込み、うつ状態になってしまう
妄想
お金への執着が強くなり、家族が財産を狙っているといった妄想が生じてしまう
徘徊
今いる場所がわからなくなる不安などから、外出して目的なく歩き回ってしまう
睡眠障害
体内時計の狂いから、寝つきが悪くなったり、朝早く目覚めてしまったりする
幻覚(幻視、幻聴)
周囲の人に見えていないものが見えたり、聞こえない音が聞こえたりする
認知症の分類
アルツハイマー型認知症
認知症の中で最も多いとされています。脳にアミロイドβやタウタンパクというたんぱく質が異常にたまり、それに伴い脳細胞が損傷したり神経伝達物質が減少したりして、脳の全体が萎縮して引き起こされると考えられています。初期段階は、脳の記憶の場所である海馬が損傷され、もの忘れから始まる場合が多いです。βアミロイドPETという検査で物忘れが始まる前にアミロイドβの蓄積を発見できる可能性がありますが、根本的な治療にまでは結びついていません。
脳血管性認知症
アルツハイマー型認知症と異なり、男性の有病率が女性の2倍近くあります。脳梗塞や脳出血、脳動脈硬化などによって、一部の神経細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、神経細胞が死んだり神経のネットワークが壊れたりすることで、記憶障害や言語障害などが現れます。小さな脳出血や脳梗塞を繰り返し、気づかないうちに脳血管性認知症になっていることもあります。生活習慣を改善することである程度は予防することが可能です。
レビー小体型認知症
レビー小体という変性した細胞が、大脳皮質や脳幹部に生じ、その影響で脳神経細胞が破壊されることで生じる認知症です。パーキンソン病の類縁疾患と考えられており、手足の震えや小刻み歩行などのパーキンソン症状が先行することが多いです。他の認知症に比べて症状の日内変動が目立ち、幻視を認めやすく、やや進行が速いとされています。
前頭側頭型認知症
大脳の前頭葉や側頭葉を中心に神経変性を来たすことで、認知機能が低下する病気です。アルツハイマー型認知症と比べて、人格、行動、言語機能への影響が大きく、記憶への影響は小さい傾向があります。会話中に突然立ち去る、万引きをする、同じ行為を繰り返すなど性格変化と社交性の欠如が現れやすいとされています。
認知症と間違えやすい病気
社会の高齢化に伴い、認知症を疑われて当院を受診する方が増えてきました。しかし、認知症と間違えやすい様々な精神疾患や身体疾患があるため注意が必要です。その中には治療できる病気も多く、見逃しを防ぐことが大切です。ただし、精神科医が不在な総合病院、検査体制の整っていない精神病院や心療内科クリニックでは対応できないこともあります。当院では系統的な診察を行ったうえで、必要に応じてCTなどの画像検査、血液検査、脳波、心理検査などの追加の検査を行い、内科医と連携し診療にあたっています。認知症疑いで当院を受診された方で、精査を行うことで他の病気が見つかった例をいくつか紹介したいと思います。
うつ病
高齢者のうつ病では、抑うつ気分や思考抑制などのうつ病症状により、注意・集中力や判断力、記憶力が低下し、一見認知症のように見えることがあります。この状態は仮性認知症と呼ばれ、実際に認知機能検査を行っても低い点数が出ます。当院でもかなりの頻度で見かけますが、治療としては抗認知症薬ではなく抗うつ薬を使用する必要があります。
慢性硬膜下血腫
転倒などの頭部打撲をきっかけに、数週間から数か月の期間で、ゆっくりと脳と頭蓋骨の間に血がたまっていく病気です。脳が圧迫されると徐々に認知機能が低下していきますが、麻痺が出ないことも多く、認知症と間違えやすいです。頭部CT検査を行うことで診断し、治療としては脳神経外科に転院したうえで、たまった血を手術で取り除く必要があります。当院でもしばしば見かける病気です。
他の脳血管障害
急性の脳出血や脳梗塞で認知機能低下を認めることはありますが、麻痺などの他の症状が目立つため、認知症と間違えることは少ないです。しかし、時に気づかれないまま長期間経過することがあり、認知症疑いとして当院を受診することがあります。多くは頭部CT検査で診断でき、必要に応じて脳神経外科に転院となります。
水頭症
頭蓋骨内の隙間に水がたまることで脳が圧迫され、認知機能低下、歩行障害、失禁などの症状を認める病気です。くも膜下出血などの後遺症として認めることがありますが、原因が分からないこともあります。ゆっくりと進行することも多く、認知症と間違われることがあります。脳神経外科で水を逃がす手術を行うことで、認知機能の改善が期待されます。当院でも比較的見かける病気です。
側頭葉てんかん
高齢者に多いてんかんの一種です。体がけいれんしないことも多く、様々な精神症状や行動上の問題を認めることから認知症と間違われることがあります。脳波を行うことで診断でき、抗認知症薬ではなく抗てんかん薬で治療を行います。当院で見かける頻度は比較的少ないです。
低活動型せん妄
せん妄とは脳機能の障害により、一時的に認知機能が低下した状態であり、身体的または精神的なストレスが誘因となることが多いです。せん妄の中でも無気力、無関心、集中困難などの静かな精神症状が中心となっているものを低活動型せん妄といいます。認知症とかなり紛らわしいのですが、症状に日内変動があることや、軽度の意識障害があることから区別します。何らかの感染症、内臓の病気、血液の異常が隠れていることも多いので、血液検査や画像検査などの検査が必要になります。内科疾患が見つかった場合は当院の内科医で対応しますが、専門医療機関に転院となる場合もあります。
早期発見・早期受診のメリット
認知症の進行を抑制する薬は何種類かあるものの、残念ながら根本的な治療法はまだ見つかっていません。そのため早期診断・早期治療を行い、症状の進行を遅らせることが重要と言えます。また一口に認知症と言っても、原因は様々です。そしてその原因によってその後の治療方針も変わってきます。一部ではありますが、治療により著しい改善を期待できる場合もあります。
認知症に関するよくあるご質問
認知症の方にやってはいけないことは何ですか?
言動を否定する、命令する、行動を制限するといった行為が挙げられます。認知症になった方の自尊心を傷つけてしまうと、周囲の人へのマイナスの感情が残ったり症状が進行したりする可能性があります。認知症になった方の気持ちを理解して、あくまで寄り添う姿勢を忘れずに接しましょう。
家族が認知症になったらまず何をすれば良いですか?
認知症になった家族の状態を把握して適切な接し方をするため、まずは家族全員で認知症について理解することが大切です。その後、症状の進行やそれに伴うリスクを未然に防げるよう、一度医療機関の受診を勧めましょう。
認知症で病院を受診するタイミングを教えてください。
他の疾患と同様に、認知症は早期診断、早期治療が大切です。認知症を疑う症状が現れたらできる限り早めに医療機関を受診しましょう。受診が遅れると治療の効果が低下してしまうだけでなく、突然徘徊して行方不明になる、車を運転して事故を起こしてしまうなど、日常生活に支障が出る恐れがあります。
認知症に関するご相談の流れ
電話相談
ご本人やご家族の認知症が疑われる症状が気になる方は、まずはお電話でお問い合わせください。
専門医療相談
認知症に関する専門知識を有する精神保健福祉士、看護師等が相談を受け付けます。
診察・診断
必要に応じて、事前面接や各種検査を実施し、医師より診断結果や今後の診療について説明を行います。
事前面接
精神保健福祉士が普段の生活の様子などをお聞きします。必ず一緒に生活をしている方、ご本人の状況を一番把握されている方の同行をお願いします。
各種検査
診断に必要な各種検査(認知機能検査、CTなどの画像検査、血液検査、脳波検査)を行います。
要入院の場合
入院治療を実施します。重篤な身体合併症に対しては、連携病院(豊橋市民病院)と連携して対応いたします。
入院不要の場合
必要に応じて通院治療を実施します。患者さんやご家族向けの研修会、地域の保健所等との連携体制の構築も行います。