抗うつ薬 

精神科の治療薬の一つに「抗うつ薬」というカテゴリーがあります。その名の通り、うつ病の治療に使われることの多いお薬です。うつ病の原因は未解明ですが、多くの研究結果から、神経伝達物質のなかのセロトニンやノルアドレナリン量の減少がうつ病を引き起こす鍵を握っているらしいことが分かってきています。

抗うつ薬は、減ってしまったセロトニンやノルアドレナリンを回復させることで、うつ状態や意欲・集中力の改善を目指すお薬になります。作用する場所(受容体と言います)によりいくつかの種類があったり、うつ病以外の病気(不安症や強迫性障害など)に使われることもあり、詳しいことは本やインターネット(厚生労働省や病院、製薬会社などのホームページ)で調べることができます。ここでは、理解するための一つのイメージをお話しさせていただきます(とても単純化してありますので、厳密さに欠けることはお許しください)。

洗面ボウルを思い浮かべていただいて、ここに水がほとんど溜まっていない状態が、病気の状態と考えます。蛇口からはチョロチョロと水が出ていますが、排水口から出て行ってしまうので、水位は低いままです。

抗うつ薬の中で、SSRISNRIと呼ばれるお薬は、排水口に栓をしてくれるイメージです。飲み始めると、徐々に水が溜まりはじめますが、効果が出るのには少し時間がかかります。また、飲み初めはセロトニン等の変化が大きいので(0.10.2になるのと、0.80.9になるのとでは、前者の方が変化率が大きい)、特に副作用に注意が必要です。やがて水量が増えて安定すると、症状が和らぎ始めます。十分に水量が増えると、蛇口から出る水の量も増えることが多く、こうなると、水栓を外しても(お薬を終了しても)安定します。この状態が一つの目指す目標です。また、NaSSAという分類のお薬は、蛇口から出る水の量を直接増やす働きがあるので、先ほどの水栓タイプのお薬とはまた違う治療反応が見られます。

抗うつ薬は、決して副作用の全くないお薬ではないですし、ある程度の期間飲み続けることは必要ですが、しっかり診断した上で注意深く使えば、有用性のあるお薬だと考えています。