認知症の分類

今回のblogは医局の担当です。

認知症とは加齢に伴い、さまざまな原因で脳の細胞が死んだり、働きが悪くなったりすることで、記憶力や判断力などが低下し、社会生活や対人関係に支障が出る病気です。年齢を重ねるほど発症する可能性が高まり、今後も認知症の人は増え続けると予想されています。進行を抑制する薬は何種類かあるものの、残念ながら根本的な治療法はまだ見つかっていません。症状や脳画像所見などから認知症を分類しますが、死後の剖検では異なる診断になることも多く、診断方法もまだまだ発展途上なのが現状です。今回は主な認知症の分類についてまとめてみました。

アルツハイマー型認知症

認知症の中で最も多いとされています。脳にアミロイドβやタウタンパクというたんぱく質が異常にたまり、それに伴い脳細胞が損傷したり神経伝達物質が減少したりして、脳の全体が萎縮して引き起こされると考えられています。初期段階は、脳の記憶の場所である海馬が損傷され、もの忘れから始まる場合が多いです。βアミロイドPETという検査で物忘れが始まる前にアミロイドβの蓄積を発見できる可能性がありますが、根本的な治療にまでは結びついていません。

脳血管性認知症

アルツハイマー型認知症と異なり、男性の有病率が女性の2倍近くあります。脳梗塞や脳出血、脳動脈硬化などによって、一部の神経細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、神経細胞が死んだり神経のネットワークが壊れたりすることで、記憶障害や言語障害などが現れます。小さな脳出血や脳梗塞を繰り返し、気づかないうちに脳血管性認知症になっていることもあります。生活習慣を改善することである程度は予防することが可能です。

レビー小体型認知症

レビー小体という変性した細胞が、大脳皮質や脳幹部に生じ、その影響で脳神経細胞が破壊されることで生じる認知症です。パーキンソン病の類縁疾患と考えられており、手足の震えや小刻み歩行などのパーキンソン症状が先行することが多いです。他の認知症に比べて症状の日内変動が目立ち、幻視を認めやすく、やや進行が速いとされています。

前頭側頭型認知症

大脳の前頭葉や側頭葉を中心に神経変性を来たすことで、認知機能が低下する病気です。アルツハイマー型認知症と比べて、人格、行動、言語機能への影響が大きく、記憶への影響は小さい傾向があります。会話中に突然立ち去る、万引きをする、同じ行為を繰り返すなど性格変化と社交性の欠如が現れやすいとされています。