睡眠薬について①

今回のblogは医局の担当です。
うつ病や不安症、双極性障害、統合失調症など多くの精神疾患では不眠を認めます。これらの精神疾患の治療には抗うつ薬、抗不安薬、気分安定薬、抗精神病薬などが用いられますが、精神症状の改善には週単位の時間を要します。その間、不眠が続くと大変つらいので、治療初期は睡眠薬を併用することが多いです。また明らかな原因を認めないない原発性不眠症という概念もあり、生活環境を改善しても改善しない場合は睡眠薬を使用することがあります。今回はよく処方される睡眠薬の特徴について書いてみました。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬

多くの方がイメージするであろう睡眠薬のグループです。効く時間の長さから、長時間型、中間型、短時間型、超短時間型という分け方をします。翌日に眠気が残ってしまうということを避けるため、精神科医は短時間型か超短時間型の睡眠薬を好むことが多いです。ただし、効果の強い睡眠薬は中間型であることが多く、やむを得ず使用する状況もあります。外来で時々、睡眠薬は怖いけど導入剤なら飲んでもよいと言われることがありますが、精神科医は導入剤という言葉を使うことはあまりありません。おそらく寝付きを改善し、翌日に残らない睡眠薬のことを導入剤と呼ぶ人が多いのではないかと思っています。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬は効果の確実性という点では非常に優れていますが、問題となる副作用もいくつかあります。実はベンゾジアゼピン受容体作動薬が作用する主な脳の部位(GABA-A受容体)はアルコールの作用部位と共通しており、副作用も酔っ払った状況を思い浮かべると理解しやすいです。例えば翌日に眠気が残ったり、足がふらついたり、記憶が飛んだり、依存したり、頻度は少ないですが情緒が不安定になったりといった症状です。

副作用のうち依存性について関心がある人は多いのではないかと思います。依存性の強さについては、コカインやヘロインなどの麻薬、タバコよりは弱く、アルコールと同程度とされています。また、立ち上がりが早く、効く時間が短いベンゾジアゼピン受容体作動薬の方が依存しやすいと言われています。短期間の使用なら依存は生じず、依存形成まで約1ヶ月かかるという意見もありますが、臨床での感覚ではかなり個人差があるように思います。実際には1週間程度で依存が生じる人もいれば、長期間睡眠薬を使用していても、あっさり減量中止できる人もいます。これは事前に判断することはできないので、依存を作らないためには、最初からベンゾジアゼピン受容体作動薬を使用しないに越したことはありません。しかし、不眠という苦痛を一時的には確実に取り除けるため、特に不安や焦燥の強い精神疾患に対して使用されることが多いのが現実です。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬以外の睡眠薬の特徴については次の機会に書いてみようと思います。