不眠について
今回のblogは医局の担当です。
悩んでいる方も多いであろう不眠についての雑感です。
一般的な成人は24時間のうち連続した6~8時間くらいを睡眠に充てています。一方、他の動物では、キリン(2時間)からコアラ(22時間)まで必要な睡眠時間にはかなり幅がありますが、人間と違って細切れの睡眠(複相睡眠)であることが多いです。人間でも長時間の耐久レースのような特殊な状況では複相睡眠となることもあるようです。
人間の乳児は24時間の中で睡眠覚醒を繰り返す複相睡眠となっています。成長とともに連続した睡眠(単相睡眠)を取るようになり、睡眠時間は少しずつ短くなっていきます。高齢になると再び複相睡眠の要素が出始め、夜中に目が覚めることが増えてきます。また必要な睡眠時間も6時間程度まで短くなります。一方で眠気を感じる時間は若い時に比べて早くなり、20時~22時に床に就くと早朝に目が覚めることになります。
上記のように年齢とともに人間の睡眠は変化していきますが、若い時と同じように長時間眠りたい、途中で起きてはいけないと思い込んでいる方も多く、当然生物としては無理があるため悩むことになります。このようなことから、不眠症とは眠れない病気ではなく、眠れないことを悩む病気であると昔から言われているのです。ただし、不眠はうつ病や不安症、双極性障害、統合失調症などの多くの精神疾患に合併する症状であり、精神疾患を認める場合はその治療そのものが、間接的に不眠に対する治療にもなります。
夜中に起きてしまった場合は再び眠れれば全く問題ありません。最近ではほとんどの人がスマートフォンを所有しており、夜中に目が覚めるとついスマートフォンで時間を確認したくなりますが、光刺激で脳が起きてしまうためおすすめしません。最悪なのは時間を確認した後にもスマートフォンを触り続けることです。これでは脳が完全に覚醒してしまいます。たとえ再び眠れなくても目を閉じて横になっているだけでも休息は得られるので、夜中に起きても何もしないとことおすすめします。同じ理由で就寝直前にスマートフォンを触ったり、テレビを見たりすることも入眠の妨げになります。
寝つきをよくするためにアルコールに頼る人も時々いますがおすすめしません。確かにアルコールを飲むと寝つきがよくなるように感じますが、睡眠が浅くなるため、眠りの質自体は悪化します。さらに筋肉が弛緩して舌根が落ちるため、睡眠時無呼吸症候群のリスクも上がります。また、アルコールを毎日摂取すると、依存性が問題になることがあります。アルコール以外の薬物については、カフェイン(コーヒー、緑茶など)を摂取する習慣をやめるだけでも睡眠が改善する場合があります。
生活習慣の改善を行っても、自然な睡眠が確保できない場合は睡眠薬を処方することもあります。睡眠薬についてはまたの機会に書いてみようと思います。