今回のブログは薬剤部が担当します。
『“破傷風ワクチン”が不足しているため今夏は特にケガに注意を!』というニュースを目にしました。破傷風も前回の百日咳同様、罹患の頻度の少ない疾患でどういったものなのかよく知らない方が多いかと思います。
破傷風は破傷風菌が傷口から侵入し、“毒素”を産生することでかかる感染症です。破傷風菌は土壌によく存在しており感染経路の例として『錆びた金属製品(鉄くぎや農機具等)でケガをすると傷口から感染する』といったようなものです。直接ケガをしなくても別の理由でケガをした手で土に触れていると創部から侵入して感染することもあります。
なお破傷風は人から人への感染はしません。
症状は様々な神経障害が起こり死亡率も高く非常に危険です。
破傷風は予防としてワクチンが存在しますが、他のワクチンのような細菌やウイルスに対するものとは異なり毒素に対するワクチン(トキソイド)となっているのが特徴です。前回の百日咳の際にも触れましたがDPT(ジフテリア・百日咳・破傷風)三種混合ワクチンの一つで定期接種に含まれています。それ以外にも追加接種があります。
年間の発病者は約100人程度となっており、その多くが1968年以前に生まれたワクチン未接種者となっていることからもワクチン接種の重要性がわかります。
破傷風の治療法は他の感染症とは少し異なり、産生される毒素が危険なため毒素を中和する破傷風ヒト免疫グロブリンが投与されます。他にも細菌感染症のため抗生剤も有効でありメトロニダゾールやペニシリンGなどが使われます。