病気不安症について:その3

愛知県豊橋市の精神科の可知記念病院です。
今回はのブログ医局が担当します。

前回は本症のリスクファクターについて述べました。

発症とその維持には、健康の脅威への注意が著しく強くなっていることが挙げられます(Psychol Med. 2022 Mar;52(4):604–613.)。内受容感覚への過剰な注意がその感覚のゲインを挙げてしまうことも示されており(Cereb Cortex. 2013 Jan; 23(1): 114–126.)、病気不安症や身体症状症に認められる身体症状はそれによるところが非常に大きいでしょう。多くの精神障害にも言えることですが、尤度比の低いはずのものを高く見積もってしまい、事前の信念がそちらに引っ張られるようにどんどん更新されてしまいます。そうなると、「やっぱり私は病気だ」という凝り固まった考えが染みつき、なかなか離れてくれません。そして、その信念に沿うように情報を集めてしまいます。これらの特徴がCOVID-19の流行下で顕著に見られたことは、多くの医療者が感じているでしょう。とは言え、生物学的な側面はあまり明らかになっておらず、研究によって結果が一致していないことが問題になっています(J Psychiatry Neurosci. 2017 May;42(3):200–209.  J Affect Disord. 2023 Mar 1:324:370–378.)。なかなか難しいですね…。

なお、病気不安症を有する患者さんは一般人口と比較して全原因死亡率が高く、自殺も多いことが示されています(JAMA Psychiatry.2024;81(3):284–291.)。(図)その理由は、慢性的なストレス、慢性炎症、ライフスタイル(アルコールや物質使用に走ってしまう)、「心気症だから」ということで医療から過小評価され適切な処置や治療を受けられない、などが挙げられます。自殺はうつ病や不安症の併存で多く、患者さんは「病気なのではないか」と大きく悩むものの誰も真剣に取り合ってくれず、孤立していき抑うつや不安に苛まれていくのでしょう。