豊橋にある精神科の可知記念病院です。本日のブログは医局が担当します。
慢性疼痛について:その11
慢性疼痛に用いられる治療薬の続きです。メタ解析でよく見かける治療薬に“高濃度カプサイシンのパッチ”がありますが、これは2024年現在の日本で処方できるものではありません(同じようなものを作ろうとすると、カプサイシンの軟膏を調剤)。糖尿病性ニューロパシー以外の神経障害性疼痛でよく用いられるようです(Lancet Neurol. 2015 Feb;14(2):162–173. Pain Med. 2019 Jun;20(Suppl 1):S2–S12.)。これはなかなかにサディスティックな治療と言えるかもしれません。カプサイシンはAδ線維やC線維のTRPV1チャネルに結合するのです。すると当然のことながらサブスタンスPが放出され痛みが強くなる…のですが、これを我慢して続けているとサブスタンスPが枯渇し神経の脱感作が起こるという、荒療治だな!と思わせるもの。なぜこのカプサイシンを取り上げたのかと言えば、H2ブロッカーであるラフチジン(プロテカジン®)が、カプサイシン感受性上行性ニューロンに作用してある種の疼痛に有効かもしれないためです。神経障害性疼痛のひとつとされる口腔内灼熱症候群/舌痛症やタキサンによるニューロパシーに有効なことがあり(J Oral Pathol Med. 2009 Mar;38(3):262–268. Gynecol Oncol. 2012 Oct;127(1):172–174.)、対象となる疼痛は限られるかと思いますが、日本におけるカプサイシン的な薬剤という立ち位置でしょうか。TRPV1チャネルに作用というのを考えると、慢性咳嗽や片頭痛にひょっとしたら…?と想像はしますが、どうでしょう。