豊橋にある精神科の可知記念病院です。本日のブログは医局が担当します。
慢性疼痛について:その10
前回は、代表的な治療薬を述べました。これら以外でやや使用されがちなのが抗精神病薬であり(Clin J Pain. 2018 Jun;34(6):585–591.)、これは様々な5-HT受容体への配慮を持つ薬剤でもあります。神経障害性疼痛では、下行性疼痛調節系のセロトニンとドパミンは疼痛を促進も抑制もすることが知られており、脊髄視床路や脊髄後角のシナプス前部に存在する5-HT2受容体/5-HT3受容体/D1受容体が促進、5-HT1B受容体/D2受容体/D3受容体が抑制に関与するようです(Mol Pain. 2021 Jan-Dec:17:17448069211043965. Neurology. 2008 Jul 15;71(3):217–221.)。そのため、抗精神病薬を用いることは理に適っていると言えるでしょう。この中でアリピプラゾールはD2受容体とD3受容体のパーシャルアゴニストなので、この特性も利用していることになります。他にモノアミンに作用するものでは、D2受容体とD3受容体のアゴニストであるプラミペキソールも有望株。そして、下行性疼痛調節系の中でノルアドレナリンの役割を考慮するとアトモキセチンが候補になりますし、そしてそのノルアドレナリンはα2受容体がシナプス前部で、α1受容体が抑制性介在ニューロンで抑制に関わるため、α2受容体アゴニストであるクロニジンやグアンファシンも治療薬になってくれる可能性があります。