豊橋にある精神科の可知記念病院です。本日のブログは医局が担当します。
慢性疼痛について:その8
前回は、慢性疼痛の治療は薬剤治療にせよ非薬剤治療にせよなかなか難しいということを述べました。思うに、どのような治療であっても、患者さんが主体性を取り戻すことがキーなのだと私は考えています。“主体性”は古いと言われがちですが、それでも私は重要なのだと強調したいのです。慢性疼痛に圧倒される生活は、痛み、痛み、痛みの日々。何をどうしても痛みがついて回り、痛みが軽い日があったとしても、痛みがあれど何かしら行動できた日があったとしても、それに自ら気づくことが出来ません。「痛くて何も出来ない」と思い込み、痛いから、痛いから、痛いから…という信念ばかりが強まり、そしてその信念が実現するかのような時間を過ごしてしまいます。そうなると、症状が固定というかむしろ増強されていってしまうでしょう。そうなるとさらにその信念に拍車がかかり…。そこで、患者さん自身が取り組むことで何かしらの改善―これは痛みに限らず日常生活の幅なども含みます―がまさに実感されれば、「何かは出来るのだ」という一筋の光明になってくれるのだと私は思います。運動やサイコセラピーはこのことに大きく寄与できれば、臨床試験で示される効果量以上のものが発揮できるかもしれません。これはサリエンスネットワークとデフォルトモードネットワークとの強固な結びつきを緩和することでもあり、予測誤差が生じた際に否定的な信念に引っ張られず刺激に基づいた機能的な行動変化を起こすことでもあります。こういった考えは、慢性疼痛に限らず多くの精神障害でも該当するでしょう。