豊橋にある精神科の可知記念病院です。本日のブログは医局が担当します。

慢性疼痛について:その6

前回は痛覚変調性疼痛における脳内ネットワークの乱れについて主に述べました。今回はその病態におけるオピオイドについて簡単に。

痛覚変調性疼痛ではCSF中のノルアドレナリンやセロトニンの濃度は低下しているのに対し、内因性オピオイド濃度は上昇しており、脳内のμ-オピオイド受容体の数や利用能が低下しているという報告があります(Arthritis Rheum. 1992 May;35(5):550–556.  BMC Musculoskelet Disord. 2004 Dec 9:5:48.  J Neurosci. 2007 Sep 12;27(37):10000–10006.)。ということは、痛覚変調性疼痛はオピオイド誘発性痛覚過敏(opioid‒induced hyperalgesia)が勝手に生じてしまっているのではないか、とも言えます。オピオイド誘発性痛覚過敏の一つの機序として言われているのは、μ-オピオイド受容体依存的にミクログリアのP2X4受容体の発現がアップレギュレーションされることでBDNFが放出され、脊髄後角における二次ニューロンのKCC2がダウンレギュレーションし、Cl-の恒常性が保たれなくなるというもの。Cl-が二次ニューロン内にたまることで、抑制性ニューロンから放出されたGABAが二次ニューロンを過分極ではなく脱分極させてしまうのです。