豊橋にある精神科の可知記念病院です。本日のブログは医局が担当します。
レビー小体型認知症の介護で大切なこと
病状の経過に応じた適切な介護
レビー小体型認知症の多くの人において、実際には存在しないものが見えたり(幻視)、大声で睡眠中に寝言を言ったり、歩行や動作に障が生じたりするなど、アルツハイマー型認知症などの他の認知症ではあまりみられない特徴を認めます。また、初期にはアルツハイマー型認知症で多くみられる、もの忘れなどの記憶障害は目立ちません。レビー小体型認知症では多彩な症状を認めますが、病状が進行するにつれて目立つ症状が変わってきます。本人の症状をよく観察したうえで、症状に合わせた介護者の対応が重要です。
転倒を予防することが重要
レビー小体型認知症ではパーキンソン症状と呼ばれる、身体の筋肉や関節が固くなり、思ったように動かせなくなる症状があらわれます。動作もゆっくりになり、狭い歩幅で足をすって歩くようになるため、平らなところでもつまずきやすくなります。また、姿勢を保ったり、立て直したりする反射機能も衰えるため、少しの接触でバランスを崩し転倒につながります。さらに、1日の中でも頭がはっきりしていたり、そうでなかったり日内変動を認めるため、自身の状態の変化を自覚できなかったりすることで、より転倒の危険が大きくなります。アルツハイマー型認知症の人に比べ、レビー小体型認知症の人は約10倍転びやすいといわれています。転倒による骨折がきっかけで、寝たきりになることもあるため、日頃から転倒への注意が大切です。
適切な薬物治療
レビー小体型認知症では、脳内の神経伝達物質の一つであるアセチルコリンという物質が少なくなっていることが知られています。そのため、アセチルコリンの働きを改善させる作用がある薬は、レビー小体型認知症に効果的であると考えられています。レビー小体型認知症の薬物治療では、注意障害・視覚認知障害などの認知機能障害に対する薬、幻視や妄想などの精神病症状に対する薬、パーキンソン症状に対する薬の3種類が症状に応じて使われます。
薬剤に対する過敏性に注意
レビー小体型認知症の人は医薬品に対して敏感に反応しやすいことが知られており、様々な副作用が生じたり、通常の服薬量でも薬が効き過ぎたり、症状が悪化したりすることがあります。また、市販の風邪薬や胃陽薬で具合が悪くなることもあります。したがって、これまでに認めなかった精神や身体の症状が出現した場合、薬剤性の可能性も考慮して主治医に早めに相談することをおすすめします。