豊橋にある精神科の可知記念病院です。本日のブログは医局が担当します。

慢性疼痛について:その2

前回は、慢性疼痛はコモンであり、痛みは内受容感覚のひとつとされることをお話ししました。広義の内受容感覚は“身体状態をモニタリングし、恒常性の維持に加えて環境の要求を予測しながら身体状態を変容させる能動的な制御過程”であり、脳の内的モデルによる予測と外的/内的刺激との予測誤差を検出し、それを最小化するためのものです。この内受容感覚から意思決定と感情が立ち上がり(Trends Neurosci. 2021 Jan;44(1):3–16.  Elife. 2014 Dec 2:3:e04811.)、それに応じた行動を私たちは選択し、誤差を最小化しています。これは自由エネルギー原理という理論によって精力的に研究されている分野。

そして、痛みは身体状態を変容させるものであり、広義の内受容感覚と表現できるのも納得できますね。これは疼痛を伝える経路を見ても言えることです。そこに関わってくる前帯状皮質、島皮質、腕傍核、中脳水道周囲灰白質、扁桃体…。これらは“ペインマトリックスpain matrix”と呼ばれるものの、同時に内受容感覚に色濃く関わる部位であり、その名称がふさわしくないのではないかとも言われています。そう、疼痛の経路は疼痛を伝えるのみに非ず、ですね。