豊橋市の精神科の可知記念病院です。
本日のブログは医局が担当いたします。

パーソナリティ症について:その1

パーソナリティ症(パーソナリティ障害)は精神科医の間での診断一致率も低いことが多く、現在の診断基準ではどうにも限界があります。現に、ICD-11ではDSM-5-TRのようなカテゴリカルな診断基準から刷新されており、次回のDSMの改訂ではどうなるか注目です。
DSM-5-TRでは、これまでのDSMを踏襲してパーソナリティ症を3群に分類しています。

A群(奇妙、風変わり)
猜疑性パーソナリティ症 paranoid personality disorder
シゾイドパーソナリティ症 schizoid personality disorder
統合失調型パーソナリティ症 schizotypal personality disorder

B群(演技的、情緒的、移り気)
反社会性パーソナリティ症 antisocial personality disorder
ボーダーラインパーソナリティ症 borderline personality disorder
自己愛性パーソナリティ症 narcissistic personality disorder
演技性パーソナリティ症 histrionic personality disorder

C群(不安、恐怖)
回避性パーソナリティ症 avoidant personality disorder
依存性パーソナリティ症 dependent personality disorder
強迫性パーソナリティ症 obsessive-compulsive personality disorder

では、そもそもパーソナリティ症とは何なのでしょう? 歴史的には19世紀初頭から色々と言われていたようです。統合失調症のような明確な幻覚妄想を認めず、かと言って躁うつ病のような明確な気分症状もなく、でも認知面や行動面での障害を示す、そんな一群があぶり出されていきました。しかしながら、症状面でうまくまとまりを示さず、治療してみてもあまり反応せず、精神医学での扱いはそれほどよくなかったと言えるでしょう。この記述をしっかりと行なったのは、ハイデルベルク学派のシュナイダーです。彼は“心的あり方の異常変種(疾患ではない精神障害)”の中に、“異常人格abnorme Persönlichkeit”を含めており、これについて「われわれの前に明らかに思い畫かれている人格の平均範囲からの変異、逸脱である。この逸脱は、多い方へも少ない方へも、高い方へも低い方へもおこりうる。したがって、この平均規準からの逸脱が倫理的に、また社会的にみて、あるいは正の方向にあるいは負の方向に評價されようとも問題ではないのである」と述べました(『精神病質人格』)。この中に“精神病質人格psychopathischen Persönlichkeiten”を位置させ、「その人格の異常さのゆえに自らが悩むか、または、社会が苦しむ異常」と述べ、10類型を提唱したのです(昂揚型、抑うつ型、気分不安定型、爆発型、自己顕示型、自身欠乏型、狂信型、意志欠如型、惰性欠如型、無力型)。平均からの偏倚が大きければパーソナリティ症となり、偏倚が小さければそうでないということですね。いわゆる健常者との連続性を示唆していると受け取ることができ、DSMも原則としてこれを踏襲していると考えられます。
つづく