豊橋市の精神科の可知記念病院です。
本日のブログは医局が担当いたします。
サル痘(エムポックス)
日本でサル痘(エムポックス)がポツポツと広がりを見せています。令和4年7月に国内で報告がされて以降、令和5年6月で約170名の感染が確認されています。20代~40代が多く、性別は現時点で全て男性です(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33436.html)。幸いなことに、重症化や死亡は確認されていません。
以前は、エムポックスの問診では海外渡航歴が非常に重要でしたが、今回広まっているのは90%以上が海外渡航歴を確認できない状況です。性交渉によって感染することが分かっており、かつ世界的にも男性の感染が圧倒的に多いため、“男性同士の性交渉で感染する”と思われてしまっています。確かにその側面はありますが、感染経路はそれだけでなく、例えば同一の寝室、同室での飲食、同居など、これらの濃厚接触もそのひとつなのです。
1980年代にAIDS(エイズ)が米国で流行しましたが、エムポックスと同様に男性に発症者が偏っていたため、“同性愛者の病気”というレッテルを貼られてしまったことがあります。事実は決してそうではないにもかかわらず、です。エムポックスも同じ道を辿ってしまう可能性が高く、偏見が生まれてしまわないか、広がってしまわないか、危惧されています。
なお、エムポックスが流行した要因に“天然痘ワクチンの終了”が挙げられています。エムポックスの予防には天然痘ワクチンが有効なのですが、天然痘自体が根絶されたため、この接種が世界的に終了したのです(ちなみに日本では1976年に天然痘ワクチンが終了しています)。40代以下に発症が集中しているのも、これが絡んでいるのではないか、と言われています。