豊橋市の精神科の可知記念病院です。
本日のブログは医局が担当いたします。
HSPとは?
今回のblogは医局の担当です。今回は最近話題になっている「HSP」という概念について、簡単にご紹介したいと思います。
HSPとはHighly Sensitive Person(非常に敏感な人)の略で、米国の心理学者であるエレイン・N・アーロン博士が提唱した心理学的概念であり、神経が細やかで強い感受性を生まれつき持っている人のことを指します。HSPは5人に1人くらいの割合で存在すると言われています。脳の原始的な部位である「扁桃体」の機能が過剰に働いている可能性が指摘されています。
HSPは「深く物事を処理する傾向」「刺激に圧倒されやすい」「感情の反応が強く、共感的な反応が高まりやすい」「些細な刺激を敏感に察知しやすい」という4つの特徴を持つとされています。
これらの特徴は、HSPにとって良い面もあれば、悪い面もあります。良い面としては、想像力や創造力が豊かで、芸術的な才能や表現力を持っていることが挙げられます。また、他人の気持ちを理解しやすく、寄り添ったコミュニケーションができることもあります。
一方で、悪い面としては、自分や他人への期待値が高すぎてストレスを感じやすかったり、細かな刺激でも気になって集中力が低下したりすることがあります。また、自分自身を周囲から理解されづらくて孤独感を抱きやすかったりもします。
HSPは生まれつきの気質であり、精神疾患ではありません。しかし、HSPは外界や体内からの刺激にきわめて敏感に反応してしまうため、ストレスを感じやすく、不安や抑うつなどの心理的な症状を引き起こしやすいです。そのため、HSP自体を治療するというよりも、自分の気質との上手な付き合い方を身に着け、HSPをきっかけに起こる様々な精神症状に早めに気づくことで、必要な治療につなげていくことが大切です。
HSPと自閉スペクトラム症(ASD)との関連を指摘する人もいます。HSPとASDはどちらも感受性が高く、社会的関係に苦手意識を持つという共通点があります。しかし、HSPは気質であり、ASDはいわゆる発達障害の一種で、DSM-5などの診断基準に定められる精神疾患です。HSPとASDの関連については、まだ十分な研究がなされていないようです。
では、HSPはどうすれば生きづらさを軽減できるでしょうか。まずはHSPである自分自身を否定せずに肯定しましょう。上記のようにHSPには想像力や創造力が豊かであるなどの良い点もあります。次に、自分に合った環境やライフスタイルを見つけることです。刺激過多な場所や人付き合いから適度に距離を置きましょう。そして最後に、自分の気持ちを上手く発散する方法を見つけることです。自分に合った趣味やリラックス法などを探してみましょう。