豊橋市の精神科の可知記念病院です。
本日のブログは医局が担当いたします。

帯状疱疹にワクチンを

子どもの頃に水痘(水ぼうそう)にかかったことのある人はとても多いでしょう。この水痘の原因が水痘・帯状疱疹ウイルスというウイルスです。人間の身体の中に入り込み、水痘が治っても神経細胞を取り巻く“外套細胞”にずーっと潜伏します。そして、免疫が弱まった時に活動を再開し、帯状疱疹を引き起こします。帯状疱疹は特徴的な広がり方をするので、診断しやすいと言われます。ただ、ぱぱぱっと皮疹が出る前からピリピリとした痛みが認められることもあり、この段階での診断はなかなか難しいと思われます。この帯状疱疹は、顔に出た場合は注意、というか病院の緊急受診が必要です。三叉神経や顔面神経がダメージを受けることで、眼や耳の機能、顔面の動きなどに影響を与えてしまうのです。これは覚えておきましょう!
帯状疱疹の治療には、水痘・帯状疱疹ウイルスを退治する抗ウイルス薬があります。可能な限り速やかに治療を行なうことが大切で、治療開始が遅れると後遺症を残す可能性が高くなります。その後遺症が、帯状疱疹後神経痛というもの。帯状疱疹が治ってからもピリピリとした痛みが長期にわたり続き、年単位のこともあります。痛みの程度は個人差がありますが、「焼けるように痛い」と表現する患者さんもいます。帯状疱疹にかかった患者さんの5~20%に発症すると言われ、年齢が高くなればなるほど、そのリスクも高まります。生活の質を著しく下げてしまうため、帯状疱疹にならないこと、なってしまった場合は速やかに治療して帯状疱疹後神経痛のリスクを下げること、この2点が肝要です。
そこで大事なのがワクチン。日本では2016年より50歳以上に帯状疱疹予防におけるワクチンが認可されました。小児用の水痘用生ワクチン「ビケン」が転用されていましたが、2020年1月より、より予防効果が高くかつ持続する「シングリックス(Shingrix)」が認可されています。個人的にはシングリックスを推しており、家族にもそちらを勧めて打ってもらいましたが、ネックが費用です。ビケンは1万円以下で済むのですが、シングリックスは4万円以上(2回分の費用)してしまいます!自治体によっては助成を行っているところもあるので、その助成を活かしてほしいと思います。他には、シングリックスの方が強い副反応を有するという欠点もあります。多くは発熱や倦怠感などで、新型コロナワクチンで副反応にはもう懲り懲りというかたも多いでしょうけれども、帯状疱疹後神経痛の恐ろしさを考えたら、対象のかたにはぜひとも打ってもらいたいと考えています。