豊橋市の精神科の可知記念病院です。
本日のブログは薬剤部が担当いたします。

漢方薬

漢方薬は一般的に空腹時に服用する方が吸収が良いため食前あるいは食間に服用するようになっています。決められた時間に飲み忘れた場合、気付いた時点で1回分を服用すれば問題になることはありません。2回分まとめて服用するのは避けるのが好ましいです。

不眠症や神経症などに対して用いられる漢方薬もあります。精神科でよく使用される漢方薬として抑肝散があります。抑肝散はもともと子どもの夜泣きに使われていたのですが、現在は大人の神経症状にも使用されています。漢方診断で証として体力が中程度で怒りっぽい、興奮する、イライラするなどの症状がある人に使用されます。

抑肝散は認知症患者のBPSD(行動・心理症状・いわゆる周辺症状)にも奏効するという報告がなされてから世間的にも使用量が大幅に増加している印象があります。

精神科で処方される漢方薬の組合わせで「神田橋処方」とよばれる桂枝加芍薬湯と四物湯の併用があります。

フラッシュバックは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に特徴的な再体験症状とされ、外傷体験に関連した記憶(トラウマ記憶)が突然に、また鮮明に蘇ることを指しています。桂枝加芍薬湯と四物湯の併用いわゆる「神田橋処方」はフラッシュバックといった嫌な感覚が蘇ってくることに対して使用されています。

他にも便秘やイレウス改善を期待して処方される大建中湯、CMなどでもよく見かける防風通聖散なども便秘症によく処方されています。

一般的に漢方薬は副作用が少ないと言われていますが、甘草を構成生薬として含む漢方薬はきわめて多く医療用漢方製剤の7割以上とも言われています。副作用的側面について敢えて書かせていただきますが、甘草による低カリウム血症(偽アルドステロン症とも言われ症状としては高血圧、浮腫、脱力、筋力低下)には注意が必要です。もしこのような症状が出現した場合、原因となる漢方薬の服用を中止すれば通常、すぐ症状は改善します。抑肝散はますます高齢化社会となっていく日本において使用量が今後増加していくことが示唆されます。

効果についても体質改善につなげてから効果につながるとのことで効果発現が遅くなるとも言われていますが、種類によっては即効性があり、数日で症状が改善するケースもあります。漢方薬の効果は用量に依存するとは限らず、わずかな量の投与で薬効が得られるケースもありますし、漢方薬を継続的に服薬することで精神症状が改善傾向となり治療終了となるケースもあります。症状が改善したからと漢方薬の投与をやめて数日後、症状が悪化するケースも経験したことがありますので効果については人それぞれだと理解しておくといいのではないかと思います。