防衛機制について

今回のblogは医局の担当です。
防衛機制とは、受け入れがたい思考や感情に伴って出現する不安を解消するために人間の心が無意識的に使う戦術です。不安とは危機に対応するための原始的な情動反応であり、防衛機制そのものはどれも日常生活の中で生じるもので、それ自体は異常ではありません。ただし、過剰な防衛機制の結果として、様々な神経症の症状が出現するといわれています。今回は代表的な防衛機制とその特徴について簡潔にまとめてみました。

抑圧

不安や葛藤を意識面から排除しようとする最も基本的な防衛機制です。フロイトの精神分析の基礎的な概念で、ストレスの結果として強い不安が意識に表れると、それを意識しないように意識から排除し、無意識にとどめておこうとする心の働きです。

逃避

一般的には現実逃避などと呼ばれるものです。関係のない別の行動に没頭して不安から逃れようとする「現実からの逃避」、理想化された空想の世界で満たされない自己実現を目指す「空想への逃避」、様々な疾患の世界に没頭することで現実の葛藤を意識しないようにする「疾患への逃避」の3つのパターンがあるとされています。赤ちゃん返りなど、発達的に低い段階の行動様式や思考形態へ逆行することを「退行」と呼び、幼少期にはよくみられます。

反動形成

不安の原因とは真逆の思考様式をもつことで不安や葛藤から逃れようとする防衛機制です。例えば、性的欲求に対して過度に禁欲的な人生観を持ったり、攻撃的衝動に対して過度に利他的犠牲的な態度を取ったりします。

合理化

一見合理的な、しかし自己流の解釈によって自分自身および第三者を納得させようとする現象です。有名なイソップ童話の狐が「ブドウは酸っぱいから嫌い」と言う態度がこれに当てはまります。

置き換え

不安の対象を別の対象に置き換えようとする防衛機制です。親への秘められた葛藤を上司へと置き換えるといった一見無関係な行動によって解消を図ったりすることを「代理形成」、不潔というイメージを消すために手を洗うといった不安の対象を象徴化してそれを解消したりすることを「象徴化」といいます。

取り入れ

両親や社会や文化が善しとするところを自分の中に取り入れ、自分の内的規範とします。攻撃してくる強力な他人に対し、反撃できないときには、その他人の意見を取り入れ、あたかも自分が当初から攻撃者と同意見であったように信じることがあります。

投影(投射)

自分の弱点や容認しがたい欲求を、特定の(自分にとって重要な)他人の中に見いだし、相手を責めることによって不安を軽減する防衛機制です。責められた相手は、恨みや怒りを一身に引き受けねばならず、濡れ衣を着せられる感じを抱くことになります。