今回のブログは医局が担当させていただきます。
忖度?
サイコセラピーの4つの要因を前回は述べました。これらと区別して挙げておきたいのが、政治で有名になってしまった言葉の“忖度”です。実際のセラピーの効果ではなく、治療者側が“効果と勘違い”してしまう要因。一生懸命に取り組む治療者を見て、もしくは父性的な治療者を見て、患者さんは「良くならないって言えない…」と思い、治療者を失望させまいとして「良くなりました!」と言ってしまいます。でもそれは薬剤治療にも言えること。「お薬が効いていないなんて言ったら、先生がっかりするかな…。いや、怒っちゃうかな…。そうしたらもう診てもらえないかも…」と患者さんが思ってしまったら、もう薬剤の正確な評価を私たちはできなくなってしまいます。先にも述べましたが、患者さんは私たちが思う以上に医療者に気を遣ってくれています。それを忘れないようにしましょう。
どんな治療法もイヤイヤ受けたら良い効果は出ませんし、途中で患者さんは受けなくなるかもしれません。いっぽうで、治療者が必死すぎたり権威的であったりすると、患者さんは「良くなったって言わないといけないんじゃないか…」と忖度してしまう可能性もあります。大事なのは
「どのような学派においても、治療が成功するためには、治療者が患者のことを気遣っていると、そして治療者には援助する能力があると患者が確信することが必要である」
「多くの患者に対して、治療の成功は、治療者が治療的人間関係を確立できるかどうか、その能力にかかっている。そしてその能力はあらゆる学派の訓練プログラムにおいて等しく教えられている」(いずれも『説得と治療:心理療法の共通要因』)
まさにこの通りですね。