認知症のBPSDに対するケア

今回のblogは医局の担当です。

認知症に伴う行動や心理の症状は医療の現場ではBPSDと呼ばれています。記憶障害が認知症の中核症状とされていますが、本人や家族に負担を強いるという点ではBPSDの影響はかなり大きいです。BPSDの症状は多岐にわたっており、認知症の進行に伴って変化します。BPSDは周囲から見ると本人の性格や気分の問題に見えるかもしれませんが、治療を工夫したり環境を調整したりすることで対応できることもあります。したがって、あらかじめBPSDとその対応について理解することはケアにとって大切です。

妄想

事実ではないのにかかわらず、金品などを盗んだと家族に対して妄想を抱いて怒り出すことがあります。妄想が強くなっている時は、いくら本人に説明しても聞き入れないことがほとんどです。まずはこの話題から意識をそらし、妄想の対象となっている家族とはできるだけ距離を取ることが大切です。症状が強い場合は精神科などの医療機関を受診したほうがよいでしょう。

幻覚

事実ではないのにかかわらず、見えないものが見えたり、他の人には聞こえない声や音が聞こえたりすることがあります。周囲からすると信じ難いものですが、認知機能低下に伴いしばしば認める症状です。鮮明な幻視がある場合はレビー小体型認知症を疑いますが、身体疾患に伴ったせん妄を否定するために、血液検査や画像検査などの検査が必要になります。

易怒性・興奮

いつもイライラしていて、些細なことで急に怒り出し興奮することがあります。怒りに対して怒りで返すのではなく、相手のペースに乗らず低い声でゆっくりと対応し、耐えられなければ一旦その場を離れることも効果的です。怒っている人を目の前にすると、とても長い時間に感じますが、実際は怒りが30分以上続くことは少ないです。

脱抑制

気分が高揚し多弁になったり、場にそぐわない行動を認めたりするなど、マナーや礼儀正しさが失われた感じがすることがあります。逸脱した行為に腹を立てるのではなく、安心感を与えながら行動を優しく止めてあげましょう。

うつ

気分がふさぎ込み口数が少なくなり、水分や食事の摂取が不十分になるなど、抑うつ症状を認めることがあります。栄養不足や脱水は高齢者の身体にとって危険なので、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

不安

同じことを何度も確認するなど、生活全般の些細なことが不安になり、落ち着かなくなることがあります。しつこくてうんざりすることもあるでしょうが、面と向かって否定すると自身が受け入れられていないと感じ、より悪化する傾向にあります。本人の苦しみに共感する姿勢を保ちつつ、別の話題に気をそらせてみましょう。

無関心

以前は好きだったことに興味や関心を示さなくなることがあります。反応しないからといって声を掛けなくなるとますます無関心になるので、些細なことでも声をかけてあげましょう。認知症になる前に興味があったことを話題にするのもよいでしょう。

異常行動

同じところを行ったり来たりするなど意味のない行動を繰り返すことがあります。誰かに迷惑がかかる行為でなければ、好きにやらせてあげると自然にやめることがあります。しばらく見守っても続くようであれば、優しく別の行動を提案し誘導しましょう。