レビー小体型認知症とは
今回のblogは医局が担当します。
レビー小体型認知症とは認知症全体の約20%を占め、アルツハイマー型認知症についで多く、脳血管性認知症とともに三大認知症と呼ばれています。主に65歳以上の高齢者に多く発症しますが、40代~50代での発症もしばしば認めます。アルツハイマー型認知症が女性に多く見られる一方で、レビー小体型認知症は男性に多い傾向があります。レビー小体型認知症では脳の中にレビー小体と呼ばれる物質の蓄積を認めます。
レビー小体型認知症の症状
レビー小体型認知症では記憶力低下、注意力の低下、視覚認知の障害などが主にみられますが、発症初期は記憶障害が目立たない場合も多く、アルツハイマー型認知症のような一般的な認知症とは周囲が認識できないことがあります。存在しないものが見えたり(幻視)、1日の中での認知や感情の変化(日内変動)、歩行などの動作の障害(パーキンソン症状)、ひどい寝ぼけ(レム睡眠行動障害)などの症状が記憶障害に先行することが多いです。これらの特徴的な症状は初期のアルツハイマー型認知症では目立ちません。したがって適切な介護の方法や、周囲の人に望まれる対応がアルツハイマー型認知症と異なることに注意する必要があります。
レビー小体型認知症の治療
レビー小体型認知症では脳内のアセチルコリンという物質が、アルツハイマー型認知症以上に少なくなっています。そのためアセチルコリンを働かせるコリンエステラーゼ阻害薬という薬物が効果的とされていますし、精神や行動の症状に対して他の薬物が用いられる場合もあります。しかし、レビー小体型認知症では薬物に過敏に反応することがあるため、副作用が出やすかったり、かえって症状が悪化したりするので注意が必要です。またレビー小体型認知症ではパーキンソン症状という筋肉や関節が思うように動かせなくなる症状を認めます。アルツハイマー型認知症に比べて10倍転びやすいといわれているため、ふらつきなどの副作用がある睡眠薬などの薬物は慎重に用いなければなりません。
特徴的な症状に対する対応
●認知機能の日内変動
レビー小体型認知症の症状の日内変動は予測が立てにくいため、介護者などの周囲の人は、本人の頭の働きの程度を観察することが大切です。大事なことは頭がはっきりしているときに伝えたり、ぼーっとしている時は危険を避けるためにそばで見守ったりする必要があります。
●見間違いや幻視、妄想
レビー小体型認知症では見たものを違うものとして認識したり、周囲のものが歪んで見えたりすることがよくあります。さらに進行すると実際には存在しない子供や小動物などが見えるという幻視という症状を認めます。見間違いや幻視に関連した妄想を認めることが多く、またアルツハイマー型認知症にみられるような嫉妬妄想を認める場合もあります。見間違いや幻視に対しては照明を明るくしたり、壁紙や室内の状況をシンプルにしたりするなどの工夫が効果的とされています。妄想に対しては強く否定したり、感情的に対応したりはせず、本人が現実として感じ苦しんでいることに共感することで、心が落ち着く場合があります。
●パーキンソン症状
レビー小体型認知症では小刻みな歩行となり、ちょっとした段差でつまずくなどの歩行障害が出現します。また筋肉や関節が固くなり、一旦バランスを崩すと立て直すことができず、転倒しやすくなります。転倒を防ぐためにはできるだけ段差をなくすなど自宅の環境を見直すことが大切です。レビー小体型認知症の方に後ろから不用意に声をかけると、振り向きざまにバランスを崩し、転倒する恐れがあるので気を付けましょう。
●レム睡眠行動障害
レビー小体型認知症では眠っている時に大声で寝言や奇声を上げたり、暴れたりすることがあります。これは悪夢を見ている場合がほとんどです。就寝してから90分後に最初のレム睡眠がおとずれますが、この時は10分以内に治まることが多いので、危険がなければ見守りましょう。朝方のレム睡眠は長く続くことが多いため、治まらなければ部屋を明るくするなど自然に目を覚ますように働きかけるのがよいです。体をゆすって急に起こすと興奮することがあるのでやめましょう。日中に不安や嫌なことがあると悪夢を見やすくなるため、穏やかに過ごせるように周囲がサポートすることが予防のために効果的です。