今回は看護部が担当いたします。

看護部のラーメンを愛してやまないラーメン好き男性看護師のラー麺ナースです。

精神科入院治療のメリット・デメリット

今回は精神科入院治療のメリット・デメリットです(当院の入院を中心に説明)。
人生において入院を必要とする事はできれば避けて通りたいところですが今抱えている辛さや不安が軽くなり、
入院治療によって症状が楽になれば今後の人生が幸せなものになる可能性があります。

では早速、精神科入院治療のメリットをご紹介します。

  •  治療薬の調整が行いやすい(増量、変更、クロザピン)
  •  外来ではできない特殊な治療を行うことができる
    (クロザピン、修正型電気けいれん療法、アルコール依存症治療プログラム)
  •  仕事から離れて療養をする、環境に身を置くことができる
  •  多くの専門職によるチーム医療を受けることができる
  • 入院中に精神科だけでなく、内科疾患の検査と治療ができる

対してデメリットは

  • 入院費がかかる
  • 仕事を休まなければいけない又は家事を誰かに任せないといけない
  • 病院という特殊な環境で生活しなければならない
  • 家と違い他の入院患者さんも生活している
  • 活動量が減り身体の衰えが起こる可能性がある

何事もメリットもあればデメリットもありますが、先に知っておくことでメリットをより活かし、
デメリットは可能な方法で補う事ができると思います。

入院治療メリットその1「治療薬の調整が行いやすい」

外来では使わないお薬も入院中に医師や看護師の観察の元使用でき治療の幅が広がります。副作用や急な症状の変化に迅速に対応できます。

又高度な精神科専門療法の1つであるクロザピン(クロザリル®)も入院して行うことができます。

入院治療のメリットその2「外来ではできない特殊な治療を行うことができる」

クロザピン(クロザリル®)を使用した治療ができる

クロザピン(クロザリル®)は他の抗精神病薬で十分な治療効果が得られない『治療抵抗性統合失調症』に対して、もっとも高い評価を受けている薬です。海外では米国、英国をはじめ100ヶ国以上で承認され効果を上げている薬剤で、国内臨床試験でも治療抵抗性統合失調症患者の50%以上に改善が認められています。

医師(クロザリル®患者モニタリングサービス登録医)が処方し内科医との連携をし、まれではありますが、白血球減少や心筋炎、高血糖といった重篤な副作用が出現するおそれがあるため、副作用の早期発見や悪化防止のため定期的な採血などの検査を行っています。

修正型電気けいれん療法が受けられる

修正型電気けいれん療法は特に速やかな治療効果が必要な場合、薬物療法が十分な効果を示さない、あるいは副作用の問題で薬剤が十分使用できない場合に適応されます。

従来の電気けいれん療法とは異なり、けいれんを起こさないように改良されたものを修正型電気けいれん療法といいます。治療は精神科医や麻酔科医、看護師の構成で入院管理のもと行われます。病状によりますが外来通院の患者さんが一泊二日の入院で実施することができます。

アルコール依存症の患者さん向け教育入院としてアルコール依存症治療プログラム(KARPP)を受けることができる

アルコール依存症の治療の基本は断酒ですが、強い意志を持って断酒を決意すればやめられるわけではありません。お酒が体に入っていることが普通の状況であった日々が長い方は、お酒を断つと体も心も調子を保てなくなります。

これが離脱症状です。アルコールを断つことによる離脱症状は眠れない、不安が襲ってくる、落ち着かない、幻覚が見える、汗がダラダラ出る、手が震える、動悸がする、熱が出るなどがあります。この離脱症状を収めようと再びお酒を飲むという悪循環に至ります。入院してお酒のない環境に身を置き、離脱症状を抑えるために抗不安薬などを服用しながら安全に離脱期をおえることができます。

離脱を脱したとしてもやはり強い意志だけではアルコールをやめることはできません。

日本ではアルコールは合法なのでどこに行っても溢れています。アルコール依存症の方にとってアルコールの誘惑は日常に多く存在しています。

アルコール治療プログラムでは日常に溢れるアルコールの誘惑に打ち勝つ武器(手段)を学習します。強く生きるのではなく、賢く生きることでアルコールをやめて健康な人生を取り戻す学習をします。又入院中にアルコール依存症当事者の会である断酒会やAA(アルコーホーリクス・アノニマス®)に繋がり退院後の共に断酒を志す仲間づくりのきっかけを作ることができます。

入院治療メリットその3「仕事から離れて療養をする環境に身を置くことができる」

仕事の事、家庭の事、誰しもが悩み気にすることですが、精神科の病気で悩む方はその事を大きく気にしている人が多く、その事が病気を悪化させる原因になることがあります。

例えばうつ病の患者さんの中で仕事熱心で責任感が強く真面目な性格(メランコリー親和型性格)方は仕事の事を常に気にしてなかなか治療が進まない場合がります。入院を決断することはその方にとって大変つらい決断になるかもしれませんが、仕事と切り離した療養を行うことで、結果的に回復への道のりが一番近かったりします。

入院治療メリットその4「多くの専門職によるチーム医療を受けることができる」

入院中は病院内で働いている様々な職種が患者さんをサポートします。

  • 精神科医師
  • 内科医師
  • 看護師
  • 精神保健福祉士
  • 臨床心理士
  • 作業療法士
  • 歯科医師
  • 歯科衛生士
  • 管理栄養士

上記以外にも多くの職種が患者さんをサポートします。

精神の健康のみならず身体の健康そして人が生きる上で非常に大切な健康に食べる事をサポートします。

入院中だけが治療ではありません。入院中に退院後の医療支援、生活支援を入院中に調整して退院と同時にこれらの退院後の支援をスタートさせます。

入院治療メリットその5「入院中に精神科だけでなく、内科疾患の検査と治療ができる」

精神科の病気の症状は気分や眠れないといういかにも精神科の症状だけではありません。体の症状として出ることも多いです。

その場合、精神科の病気による症状なのか、体の病気による症状なのかを判別する必要があります。当院での入院治療は、精神科医師と内科医師が連携して患者さんを診ますのでしっかりと診断することができます。また看護師も精神と身体共に看る事ができる看護師が入院治療をサポートしています。診断に必要な検査機器も揃っています。

長くなりましたが精神科入院治療のメリットを詳しくお話させていただきました。
次に精神科入院治療のデメリットです。

入院治療デメリットその1「入院費がかかる」

入院するにはやはり費用がかかります。
日本は医療費に対する公的支援が多くあり、これらを活用すると入院費用を抑えることができます。入院中に使用できる公的支援は当院のホームページでもご紹介しています。

公的支援について

上記をクリックしますと説明ページに飛びます。

これらの制度は把握するのが難しく感じる方が多いです。看護師の私も相談を持ちかけられることがありますが私の場合迷わずその道のプロである精神保健福祉士さんをお呼びします。入院中の医療費のことや退院後の各種サービス利用の相談に乗ってくれます。

ポイント 費用や制度、サービスの相談は精神保健福祉士へ聞く

入院治療デメリットその2「仕事を休まなければいけない又は家事を誰かに任せないといけない」

入院をする期間にもよりますが、入院をするということは今行っていた事を一時的にもやめなければいけないことになります。

仕事を休むと生活費と治療費はどうすればよいのか?自分のやっている仕事を他の人に頼まなければならない、家事ができないと子供たちのお世話はどうすればよいだろうか?又高齢の父母のお世話はどうしたら?などこれらの問題は必ず発生しますしかしながら入院治療を必要とする状況の場合は、すでに仕事や家事に影響を及ぼしている可能性がありますし、今後さらに大きな影響を受け生活環境に支障をきたす可能性があります。

現状が

  • 外来治療では補えない病状になりつつある(医師判断)
  • 仕事や家事、学業に支障をきたし継続困難に近い、もしくは継続すると後に困難が予想される
  • 病識がなく内服治療が継続できていない為に生活に支障が出ている(家族目線)

上記の項目に当てはまる場合は入院治療のメリットが高いと考えられるのでご家族やお勤め先の協力を得て入院治療を選択の一つと考えてみましょう。

入院治療のメリットでも詳しくお伝えしましたが、入院でできる治療は外来治療より幅広いです。又外来で長期に渡って治療するより短い期間で効果が上る可能性もあります。医師、精神保健福祉士とご家族で十分に話し合って決めましょう。費用面は公的支援を活用しましょう。

ポイント 今後の人生において今回の入院がデメリットよりメリットのほうが上回るかを考える

※精神科の病気には自身が病気を自覚できない病気や症状もありますので、その場合はその方の生命を守るため、生活を守るため精神保健福祉法に則った強制的な入院を行う場合もあります。

入院治療デメリットその3「病院という特殊な環境で生活しなければならない」

病院は家庭と違い治療の場ですので家庭にある快適性は少なくなります。

例えば以下の例があります。

  • 消灯時間が早い(21時ってドラマも見れない!)
  • 食事の時間が決まっている(なんか食事ばっかり食べているような)
  • 食事が健康志向(薄味)な味付け(笑。。。栄養士さん調理師さん頑張っています)
  • 怖いベテラン看護師さんがいる(漫画の世界だけだとおもう。。。)
  • おばけが出そう(出ません)
  • 誰もいない部屋のナースコールが鳴る(ノーコメント汗)

など色々ありますが、ただ一時的なことなのでなれた時には退院となっている場合が多いのでご安心ください。むしろ規則正しいリズムが完璧に出来上がります。夜寝て昼起きる生活はメンタル面に良い影響を与えることが多いです。

ので!「入院して最高の生活リズムを得たぞー!」と感じるようにしましょう(笑)

ポイント 悪い部分に目が行きがちになるけど、変換して良い部分と思ってしまおう

入院治療デメリットその4「家と違い他の入院患者さんも生活している」

家では家族のみの生活で、ご自身の部屋もありプライベートな空間が確保されているものと思いますが、病院では多くの患者さんが入院しています。今では個室や二人部屋も多くありますが、4人部屋もあります。他の方が同室であると気を使ってしまうと思いますが、通常の配慮で良いと思います。

みなさん病気を治しに入院しているので特別他の患者さんと仲良くしようとせず迷惑をかけない程度に自分の治療に専念しようと思えば気持ちも楽になるとおもいます。

ポイント 他の患者さんと無理して仲良くしようとせず、自分の事がまずは第一

入院治療デメリットその5「活動量が減り身体の衰えが起こる可能性がある」

入院中は今までより活動量が減り身体の衰えが起きます。

この衰えは高齢の方の方が大きく、若い方のほうが少ないですが多かれ少なかれ必ず起きます。

入院中の作業療法では精神面のリハビリテーションの中に身体面の活動を取り入れています。又運動は精神面の安定をもたらす効果もあります。病棟の廊下はロの字型となっており、活動量低下を防ぐため外に出ずにぐるぐると歩行ができます、ウォーキングタイムを設けている病棟もあります。

退院近くになったら病院の外周を散歩してみるのもいいと思います。

ポイント 精神科の病気は安静だけが治療じゃない 体を動かすことは精神面の安定にもつながる 入院中は調子に合わせて活動量を増やしましょう

長くなりましたが精神科入院治療のデメリットの面を補う方法を詳しくお話させていただきました。

コロナウイルスが落ち着いて健康でラーメンが美味し世界が戻ってくる事を願いながら皆さんまた会いましょう。


ラー麺ナース