クロザピン治療薬について

クロザピン(クロザリル®)は他の抗精神病薬で十分な治療効果が得られない『治療抵抗性統合失調症』に対して、もっとも高い評価を受けている薬です。海外では米国、英国をはじめ100ヶ国以上で承認され効果を上げている薬剤で、国内臨床試験でも治療抵抗性統合失調症患者の50%以上に改善が認められています。
クロザピンは日本では2009年から使われていますが、この薬についての講習を履修し、緊急時の対処を含めて十分な知識を習得し、審査を通過した医師(クロザリル®患者モニタリングサービス登録医)だけが処方できます。可知記念病院では、内科医との連携の下に必要な手続きを行い、2016年よりクロザピンによる治療を実施してきました。

治療抵抗性統合失調症とは

統合失調症に対する薬物治療は進歩しており、多くの方が社会復帰できるようになりました。一方で、複数の抗精神病薬を十分な量、十分な期間用いても症状が十分に改善しない、または副作用のために服薬継続が難しく、長期にわたる入院を余儀なくされ、生活に重度の支障をきたしている患者さんがいます。そのような状態を「治療抵抗性統合失調症」と呼びます。

クロザピンの効果と副作用

クロザピンは治療抵抗性統合失調症患者の50%以上に効果が認められます。長期にわたる入院を余儀なくされている方の退院が実現することもあり、長年つらい症状に苦しんできた患者さんやご家族にとっては切り札とも言える治療薬です。
しかし、まれではありますが、白血球減少や心筋炎、高血糖といった重篤な副作用が出現するおそれがあるため、副作用の早期発見や悪化防止のため定期的な採血などの検査を続けることが義務づけられています。また、初回投与開始から18週間は、入院管理下での治療が必要です。
重い副作用があるにもかかわらず、クロザピンが今日世界中で高い評価を受け、日本でも使用例が増えているのは、この薬が今までの治療では良くならなかった統合失調症にも非常に高い効果を持ち、それによって多くの患者さんの生活に希望をもたらしてきたという事実があるからです。

クロザリル®
患者モニタリングサービス(CPMS)

クロザピンによる治療を行う医療機関は採血当日に血液検査などの結果を得ることができること、副作用に対する対応が可能なこと、糖尿病内科医との連携が可能であること、CPMS登録医、CPMSコーディネート業務担当者、クロザリル管理薬剤師がそれぞれ2名以上いることが登録要件になっています。可知記念病院はこれらの要件を満たしており、クロザピンによる治療が可能な医療機関です。
クロザピンを使用する患者さんは、個人が特定できないように配慮された形でCPMSというシステムに登録することが義務付けられています。これは適切な頻度で検査が行われ、安全に使用されているかを絶えず確認するためのものです。仮に副作用が出現した場合にも、早期発見ができ、適切な治療を行うことで回復につなげることができます。

詳しく説明を受けたい場合は

クロザピンを使ってみたい、クロザピン治療に関して詳しい説明を受けたい、とお考えの方は現在の主治医にご相談ください。また他の医療機関で治療を受けられている方は、現在の主治医とご相談いただき、主治医より可知記念病院まで詳細をお問い合わせいただくよう依頼してください。その後、診療情報提供書(紹介状)ご持参の上、外来受診をしていだだくことになります。