今回のブログは医局が担当します。

メンタライジングについて:その2

MBTは、前回述べたのように精神分析が主体になっています。しかし、古典的な精神分析と異なり、“今ここ”という、実際の診察室の中で治療者と患者さんとの交流を再重視します。そのため、転移/逆転移も単なる過去の反復だととらえません。必ず“今ここ”に片足を残しておいて、過去に起きたことにも入っていくようにします。また、治療者は、患者さんのことを“わかったふう”で聞かない、決めつけない、自分の知識を振り回さない、といった、“無知の姿勢 not-knowing state”でその対話に臨みます。治療者がご信託のように“解釈”を与えて患者さんに洞察を…というスタイルではない、ということですね。確かに私たちは精神障害そのものの専門知識を持ってはいますが、患者さん自身についてはまったく知らないわけですし。専門知識が探究心の目を曇らせてはなりません。例えば「うつ病とはこういうものだ」や「うつ病の精神分析的理解はこういうものだ」と知っていても、それがすべて患者さんに当てはまるかどうかはまったくの別問題。患者さんのことは“わかりえない”のであり、“目前の患者さんに対する専門知識の外的妥当性”は疑っておかねばなりますまい。ですから、ひとりひとりの患者さんに対して常に興味を示し、無理にわかろうとせず、わからないことは率直に聞いて、教えてもらうという姿勢が大事。そして、自分の理解が間違っていたら素直に謝ることも欠かせませんね。こういう治療者の態度がまさにメンタライズ機能を表しており、それを診察室で示すことが患者さんのメンタライズ機能を促進します。